群論の基礎

まずはの定義であるが, 最も simple なのは次の tautological なものである。

  • 群とは集合の圏での group object である。

つまり monoid object \[ \begin {split} \mu & : G\times G \rarrow {} G \\ \eta & : * \rarrow {} G \end {split} \] で, 図式 \[ \xymatrix { G\times G \ar [dd]_{\nu \times 1_{G}} & G \ar [l]_{\Delta } \ar [r]^{\Delta } \ar [d]^{\varepsilon } & G\times G \ar [dd]^{1_{G}\times \nu } \\ & * \ar [d]^{\eta } & \\ G\times G \ar [r]_{\mu } & G & G\times G \ar [l]^{\mu } } \] を可換にする \(\nu :G\to G\) を持つものである。

このように理解しておくと, Hopf algebraHopf ring などに親しみやすくなる, はずである。

定義を理解したら, いくつかの重要な群に慣れ親しんでおきたい。

もちろん, 他にもまだまだある。

Seifert-van Kampen の定理で以下の概念が必要になる。

  • 群の自由積 (free product) \(G_{1}*G_{2}\) 及び 融合積 (amalgamated product) \(G_{1}\ast _{H}G_{2}\) の定義
  • より一般に, 群の圏での colimit

このような群の生成に関することが代数的トポロジーの言葉で述べられること を, Abels と Holz [AH93] が指摘している。彼らは, 群 \(G\) の部分群の族 \(\mathcal {H}\) から作られた \(G\) の covering の nerve の連結性に着目していて興味深い。Zaremsky は, [Bux+16] の Appendix の中で, その nerve のことを coset complex と呼んでいる。

  • 群 \(G\) とその部分群 \(\mathcal {H}\) の coset complex
  • 群 \(G\) の部分群の族 \(\mathcal {H}\) が \(n\)-generating であること

自由群については次の定理がある。

  • 群の圏での cogroup object は free group になる。[Kan58]
  • 自由群の部分群は自由 (Nielsen-Schreier Theorem)

Brazas [Bra14] によると, free topological group の閉部分群は free topological とは限らないらしい。

代数的トポロジー, 特に cohomology 作用素homology 作用素の定義で必要になる構成に wreath product がある。

  • wreath product

その際に使うのは, 対称群 \(\Sigma _{n}\) が群 \(G\) の \(n\) 個の直積 \(G^{n}\) に作用する場合であるが, より一般に, 群 \(H\) が集合 \(X\) に作用するとき, \(\mathrm {Map}(X,G)\) への \(H\) が誘導されるが, その半直積 \(\mathrm {Map}(X,G)\rtimes H\) のことを wreath product と言う。 これについては, 例えば nLab のページに書かれている。\(X=\{1,\ldots ,n\}\) のとき, \(\mathrm {Map}(X,G)\cong G^{n}\) と同一視すると, 上記の wreath product を得る。 \(X=H\) で \(H\) の積で作用するときは, Maksymenko の [Mak] で調べられている。

ここで使われている半直積という構成は, 圏論的には Grothendieck construction の特別な場合とみなすことができる。それについては, [Tam] に書いた。

  • 半直積 (semidirect product)

D. Cohen は, [CS98; Coh10] などで almost-direct product of free group という種類の群のコホモロジーを考えている。 重要な例としては, pure braid group や fiber type arrangement の complement の基本群がある。

  • almost-direct product of free group

群の構造を考えるとき, その部分群は重要である。特に正規部分群は。

  • 正規部分群 (normal subgroup)
  • normalizer
  • 中心 (center)
  • centralizer
  • 群の拡大
  • 中心拡大

ある群の部分群の集合は, 包含関係により poset になるが, elementary Abelian \(p\)-group など, 特定の種類の部分群の集合の成す poset を調べることを, Quillen [Qui78] が提案した。 分類空間などのホモトピー論の手法が有効である。

位相空間のホモロジーを調べるときに filtration が有効なように, 群を調べるときにも部分群の列を調べることは重要な手法である。

  • compostion series (組成列)
  • lower central series
  • \(p\)-lower central series
  • rational lower central series
  • derived series
  • \(p\)-derived series
  • torsion-free derived series (Harvey の [Har08])

学部レベルの群論では, これらの列は自然数で index のついたものしか考えないが, より一般の ordinal で index のついたものを考えることもできる。これらの列を用いて nilpotent や solvable などの概念が定義される。

  • nilpotent group
  • solvable group

他に必要になるだろう概念は以下のもの。

群論の授業では出てこないが, 以下のような概念もある。

Polyfree group は, free group の iterated semidirect product で構成される群であり, 例として braid 群がある。Dan Cohen と Fred Cohen と Prassidis の [CCP07] で調べられている。

Mulholland と Rolfsen の [MR] は一般化された braid 群の local indicability について考察したものである。

Bell と Margarit の [BM06] は, やはり braid 群の群論的性質を調べたものである。そこでは, center で割ると braid 群が co-Hopfian になることが示されている。

群 \(G\) と可換環 \(k\) が与えられると, group algebra と呼ばれる associative algebra \(k[G]\) が定義される。これは, Hopf algebra の主要な例の一つである。

Abel 群に対しては, その局所化が定義され, 代数的トポロジーの主要な道具となっている。 より一般の群に対する局所化を考えることもできる。存在しないことが多いが。例えば, [BF05] は perfect 群の圏は局所化で閉じていないことを示している。

Abel群については, 別のページにまとめた。

群の有限性については, 位数の有限性以外に, 分類空間を取って CW complex に翻訳することで, Wall が surgery theory のために考えた有限性の概念を輸入することができる。 また, ホモロジー代数的な有限性を考えることもできる。

References

[AH93]

Herbert Abels and Stephan Holz. “Higher generation by subgroups”. In: J. Algebra 160.2 (1993), pp. 310–341. url: http://dx.doi.org/10.1006/jabr.1993.1190.

[BF05]

Bernard Badzioch and Mark Feshbach. “A note on localizations of perfect groups”. In: Proc. Amer. Math. Soc. 133.3 (2005), 693–697 (electronic). arXiv: math/0301311. url: http://dx.doi.org/10.1090/S0002-9939-04-07562-8.

[BM06]

Robert W. Bell and Dan Margalit. “Braid groups and the co-Hopfian property”. In: J. Algebra 303.1 (2006), pp. 275–294. arXiv: math/0403145. url: https://doi.org/10.1016/j.jalgebra.2005.10.038.

[Bra14]

Jeremy Brazas. “Open subgroups of free topological groups”. In: Fund. Math. 226.1 (2014), pp. 17–40. arXiv: 1209.5486. url: https://doi.org/10.4064/fm226-1-2.

[Bux+16]

Kai-Uwe Bux, Martin G. Fluch, Marco Marschler, Stefan Witzel, and Matthew C. B. Zaremsky. “The braided Thompson’s groups are of type \(\mathrm {F}_{\infty }\)”. In: J. Reine Angew. Math. 718 (2016). With an appendix by Zaremsky, pp. 59–101. arXiv: 1210.2931. url: https://doi.org/10.1515/crelle-2014-0030.

[CCP07]

Daniel C. Cohen, Frederick R. Cohen, and Stratos Prassidis. “Centralizers of Lie algebras associated to descending central series of certain poly-free groups”. In: J. Lie Theory 17.2 (2007), pp. 379–397. arXiv: math/0603470.

[Coh10]

Daniel C. Cohen. “Cohomology rings of almost-direct products of free groups”. In: Compos. Math. 146.2 (2010), pp. 465–479. arXiv: 0811.1330. url: http://dx.doi.org/10.1112/S0010437X09004424.

[CS98]

Daniel C. Cohen and Alexander I. Suciu. “Homology of iterated semidirect products of free groups”. In: J. Pure Appl. Algebra 126.1-3 (1998), pp. 87–120. arXiv: alg - geom / 9503002. url: http://dx.doi.org/10.1016/S0022-4049(96)00153-3.

[Har08]

Shelly L. Harvey. “Homology cobordism invariants and the Cochran-Orr-Teichner filtration of the link concordance group”. In: Geom. Topol. 12.1 (2008), pp. 387–430. arXiv: math/0609378. url: https://doi.org/10.2140/gt.2008.12.387.

[Kan58]

Daniel M. Kan. “On monoids and their dual”. In: Bol. Soc. Mat. Mexicana (2) 3 (1958), pp. 52–61.

[Mak]

Sergiy Maksymenko. Topological actions of wreath products. arXiv: 1409.4319.

[MR]

Jamie Mulholland and Dale Rolfsen. Local indicability and commutator subgroups of Artin groups. arXiv: math/0606116.

[Qui78]

Daniel Quillen. “Homotopy properties of the poset of nontrivial \(p\)-subgroups of a group”. In: Adv. in Math. 28.2 (1978), pp. 101–128. url: http://dx.doi.org/10.1016/0001-8708(78)90058-0.

[Tam]

Dai Tamaki. The Grothendieck construction and gradings for enriched categories. arXiv: 0907.0061.