\(k\) を可換環とする。群 \(G\) と群環 \(k[G]\) 上の左加群 \(M\) に対し, \(G\) の \(M\) に係数を持つ\(n\)次コホモロジー群は普通以下のように定義される。 \[ H^n(G;M) = \Ext ^n_{k[G]}(k,M) \]
ホモロジー代数の基礎ができていれば, 何のことはない定義である。もちろん, 具体的な群についての計算は簡単ではない場合が多いが。
ところが, これは分類空間 \(BG\) の \(\pi _1(BG)\cong G\) 加群 \(M\) に係数を持つ (局所係数の) 特異ホモロジーとみなすことができることから,
群のコホモロジーは代数的トポロジーの研究対象としても重要なのである。
群のコホモロジーの起源やその発達の過程については, Weibel の [Wei99] の §2.2 に簡潔にまとめられている。
群のコホモロジーについて基本的なことをまとめた本もいくつも出ている。 K. Brown の本 [Bro94] が標準的だろうか。簡単なことなら,
Snaith の [Sna89] の最初にまとめられていることだけでもよいと思う。
基本的なことは, ホモロジー代数の本に書かれていることも多い。Hilton と Stammbach の [HS97] や Weibel の
[Wei94] など。もっとも, ホモロジー代数の本では derived functor として扱ってある場合が多いが。
もっと癖のあるものとして, Benson の本 [Ben98] がある。 これは代数的トポロジーをよく知っている人の書いた群のコホモロジーに関するテキストであり,
代数的トポロジーの入門としても使えなくもない。 もっとも豊富な内容を簡潔にまとめてあるので読み易いとは言えないが。 癖のあるものとしては,
Iyengar の [Iye04] もある。これは commutative algebraist のために書かれたものである。
位数の小さな有限群については, 自分で free resolution を構成して計算することもできる。 Snaith の本 [Sna89]
の最初で具体例もいくつか計算されているので, それらを自分で計算してみるとよいと思う。
有限群のコホモロジーについては, Adem と Milgram の本 [AM04] がある。
有限群のコホモロジーが代数的トポロジーの研究対象として考えられてきたことは, Snaith や Adem や Milgram
のような代数的トポロジーの研究者が本を書いていることから分かる。
Projective resolution を dual を取って逆方向に延してできる chain complex を用いたものもあり Tate
cohomology と呼ばれている。
有限群の自明な係数のコホモロジーは, いくらでも高い次数に非自明な元があるという特徴がある。ホモトピー論的には,
分類空間が無限次元のCW複体ということである。 対照的に, 無限離散群の場合は, 分類空間が有限次元になり,
よって群のコホモロジーが有限次元で止まることが多い。 例えば, \(\Z \) の分類空間は \(S^{1}\) である。もちろん, 無限群と有限群の直積は無限群なので,
そのような群のコホモロジー次元は無限大になるが。
- cohomology of discrete groups
他に関連したコホモロジーとして, 以下のようなものがある。
群 \(G\) のコホモロジーを \(G\)-graded vector space の成す monoidal category に対し定義されたものと考え,
それを monoidal category に一般化しようとしているのは, Bazlov と Berenstein [BB13] である。
2次のコホモロジーしか定義されていないが, このアプローチで一般的に monoidal category のコホモロジーが定義できるのだろうか。
以上のホモロジー代数的な群 \(G\) のコホモロジーは, その分類空間 \(BG\) のコホモロジーと同型になるので, 一般コホモロジー論 \(h^*(-)\) に対して, \(h^*(BG)\) を \(G\) の
\(h\)-cohomology と呼ぶことが多い。
例えば, 有限群の \(K\)-theory は, 表現論と深い関係にあることが, 古くから (Atiyahの[Ati61]) 知られている。 \(K\)-theory
以外のコホモロジー論になると, algebraic topologist でないと扱えなくなってしまうが, 様々な場合が計算されている。例えば,
Morava \(K\)-theory については Bakurazde の [Bak15] の §1 にいくつか文献が挙げられている。
応用としては, 物理学の 物性理論で使われているのが興味深い。 Gu や Wen らの [Che+13; GW] である。 ただ,
最近では群の分類空間の cobordism を考える方がより精密であるという提案もある。
物理と関係がある変種としては, Staic [Sta09] の “symmetric cohomology” もある。 ただ, Ault と
Fiedorowicz が [AF] で導入した, 対称群から定義 される crossed simplicial group から定義される
“symmetric homology” があるので, Staic のものは symmetric group cohomology
とでも呼んだ方がいいと思う。
- symmetric group cohomology
同様の構成として, Zarelua [Zar99] によるものもある。Zarelua は, exterior (co)homology
という変種も導入している。
- exterior group cohomology
References
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