単体的複体のホモロジーや特異チェイン複体を用いたホモロジーやコホモロジーについては, 数多くの教科書があり,
ここでその全てを挙げることはできない。 代数的トポロジーの入門的な教科書なら大抵は必要十分なことが書いてある。 また特異ホモロジーは,
重要な道具ではあるが, 様々なホモロジー論の内の一つの, ある特別な構成法にすぎない。
そのため, 私が4年生のセミナーで特異ホモロジーを扱うときは, 特定の教科書を最初から順に読むことはせず,
特異ホモロジーに関する基本的な定義と性質のリストを与え, 学生達に図書館で調べてもらうことで済ませている。
このように, 学生達に自分で調べてもらうことにしているので, 特にこの本がいい, というものはない。敢えて選ぶとすると,
以下のものだろうか:
日本語の本で特異ホモロジーについて勉強するなら, 中岡の [中岡稔70] が入手し易いし, しっかりしていると思う。 教科書としては適さないが,
百科事典的に使うために小松・中岡・菅原の [小中菅67] を持っているといいだろう。 Cubical singular chain complex
を用いた特異ホモロジーの定義が書いてあるのは, 日本語ではこの本ぐらいではないだろうか。
英語の本では, 定番は Spanier の本 [Spa81] なのだろうか。 かなり古いが。J.P. May の [May99] は,
(コ)ホモロジーを公理的に扱っていて, 手っ取り早く(コ)ホモロジーの性質を理解するには便利だろう。
他にも多数出版されているし, Hatcher の本 [Hat02] のように web から PDF ファイルを download
できるものもある。
個人的には, Poincaré のアイデアが洗練されていって, 特異ホモロジーや一般ホモロジーに至る過程が面白いと思う。
原点に戻ってホモロジーのアイデアを学ぶためにも Dieudonné の [Die09] を一度読んでみることをお勧めする。また Poincaré
の原論文 “Analysis Situs” の日本語訳 [斉藤利96] も手に入る。 “Analysis Situs”に関する website
もできた。フランス語だが。
References
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[Die09]
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Jean Dieudonné. A history of algebraic and differential topology
1900–1960. Modern Birkhäuser Classics. Reprint of the 1989 edition
[MR0995842]. Birkhäuser Boston,
Ltd., Boston, MA, 2009, pp. xxii+648. isbn: 978-0-8176-4906-7. url:
https://doi.org/10.1007/978-0-8176-4907-4.
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[Hat02]
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Allen Hatcher. Algebraic topology. Cambridge: Cambridge University
Press, 2002, pp. xii+544. isbn: 0-521-79160-X; 0-521-79540-0.
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[May99]
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J. P. May. A concise course in algebraic topology. Chicago Lectures
in Mathematics. Chicago, IL: University of Chicago Press, 1999,
pp. x+243. isbn: 0-226-51182-0.
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[Spa81]
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Edwin H. Spanier. Algebraic topology. Corrected reprint. New York:
Springer-Verlag, 1981, pp. xvi+528. isbn: 0-387-90646-0.
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[中岡稔70]
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中岡稔. 位相幾何学 — ホモロジー論 —. Vol. 15. 共立講座現代の数学. 東京: 共立出版, 1970.
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[小中菅67]
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小松醇郎, 中岡稔, and 菅原正博. 位相幾何学 I. 東京: 岩波書店, 1967.
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[斉藤利96]
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斉藤利弥. ポアンカレ トポロジー. 数学史叢書. 東京: 朝倉書店, 1996.
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