圏 \(\bm {C}\) の二つの object \(X\) と \(Y\) に対しては, その“積” \(X\otimes Y\) が定義されることが多い。集合の圏では, 圏論的な意味での product
であるが, Abel 群の圏では tensor product である。そのような “tensor product” を持つ圏で,
ある種の結合法則と単位元の法則をみたすものを monoidal category という。更にその積が “交換可能” な場合, symmetric
monoidal category と呼ぶ。Abelian category になっている場合は tensor category
と呼ぶことが多いようである。Mac Lane の本 [Mac98] でも扱われているので, まずはこれを見てみるとよいかもしれない。他にも,
量子群の表現などについて書かれた文献には, 基本的なことがまとめられていることが多い。例えば, Calaque と Etingof の lecture
note [CE08] とか, Kassel の本 [Kas95] とか。
最近の解説としては, Street の [Str12] がある。
誰が最初に monoidal category を考えたか, については, この Baez の blog post で議論されている。 それによると,
現在の monoidal category の原型となったものは, Bénabou [Bén63] により “catégorie avec
multiplication” の名前で導入されたようであるが, 正確な定義は Mac Lane [Mac63] によるようである。ただし,
Mac Lane は “bicategory” と呼んでいて, 現代の用語とは異なる。 Monoidal category という用語は, Eilenberg
と Kelly [EK66] によるもののようである。
Monoidal category の中での様子は「図示」できる。いわゆる string diagram という図があるが, これは Joyal と
Street [JS91] が導入したものだろうか。
代数的トポロジーで扱う「大きい」圏は, symmetric monoidal category になっていることが多い。また代数的トポロジーの様々な概念が一般の
symmetric monoidal category で定義できることも多い。例えば operad などである。
代数的トポロジーにとっては, monoidal structure は, small category に対しても重要な概念である。Small
monoidal category から分類空間を取り, group completion を取ることにより, 各種ループ空間を作ることができるからである。
結合性, 可換性, unit を strict にした permutative category からも無限ループ空間を作ることができる。
Category theoryでは, 例えば, enriched category を定義するために必要になる。
自分自身で enrich された圏を closed monoidal category という。より正確には, 各 object \(x\) に対し \((-)\otimes x:\bm {V}\to \bm {V}\) が right
adjoint \(\Hom (x,-)\) (internal-hom functor) を 持つ monoidal category \(\bm {V}\) のことである。
代数的な構造の表現の成す圏は, monoidal structure を持つことが多い。更に, そのような monoidal category は
braiding や dual を取る操作を持つことが多い。
また, そのような monoidal category は symmetric monoidal category で enrich
されていることも多い。 不思議なことに, braided monoidal category で enrich された monoidal category は,
つい最近まで文献に登場していなかったようである。 Morrison と Penneys の [MP19]で定義された。
可換環は, Abel群の成す symmetric monoidal category の commutative monoid object
であるが, 代数幾何学の一般化を考えるときに, 可換環をある symmetric monoidal category の commutative
monoid object に取り替えるということも考えられている。
また, monoidal category 自体, category の成す monoidal bicategory での “lax monoid
object” とみなすことができる。よってその上の “module” を考えることができる。また monoidal bicategory のような,
monoidal structure の拡張も色々考えられている。
References
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[Bén63]
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Christian
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url: https://doi.org/10.1007/978-1-4612-0783-2.
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https://doi.org/10.1093/imrn/rnx217.
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[Str12]
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Ross Street. “Monoidal
categories in, and linking, geometry and algebra”. In: Bull. Belg. Math.
Soc. Simon Stevin 19.5 (2012), pp. 769–821. arXiv: 1201.2991. url:
http://projecteuclid.org/euclid.bbms/1354031551.
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