Lie群および, その分類空間の(コ)ホモロジーについては, 日本人の代数的トポロジストが色々調べている。 古い結果については, 戸田-三村の本
[戸三78; 戸三79; MT91] にまとめられている。特に, 古典群の分類空間のコホモロジーは, 特性類との関連で基本的な道具である。
- 古典群の(コ)ホモロジー
- 古典群の分類空間の(コ)ホモロジー
- 例外群の(コ)ホモロジー
- 例外群の分類空間のコホモロジー
例外群の分類空間のコホモロジーについては, まだ完全に決定されていない場合がある。 Lie群とその分類空間の(コ)ホモロジーがどこまで決定されているか調べ,
まとめておくとよいと思う。
分類空間を取る操作の“逆”がloop空間を取る操作であるが, Lie群のloop 空間のホモロジーは扱い易いことが知られている。
- \(G\) が連結単連結 compact Lie群 なら \(\Omega G\) のホモロジーは, torsion free であり,
偶数次元の元しか持たない。[Bot56]
- Axis map \[ \CP ^n \longrightarrow \Omega U(n) \] の定義。
- Axis map が同型 \[ \mathrm {Symm}(H_*(\CP ^n)) \rarrow {\cong } H_*(\Omega \mathrm {SU}(n)) \] を誘導すること。ただし \(\mathrm {Symm}\) は free commutative algebra を意味する。
- \(H_*(\Omega \mathrm {SU}(n))\) の Hopf algebra の構造。
-
Generating map \[ U(2n)/U(n)\times U(n) \longrightarrow \Omega \mathrm {SU}(2n) \] の定義。
- 上の generating map は \((2n+1)\) 次元までのホモロジーの同型を誘導する。
Bott は, [Bot56] で \(\Omega G_2\) のホモロジーも調べている。 Lie群の (多重) loop 空間 \(\Omega ^kG\) のホモロジーについても,
何がどこまで分っているかまとめておくとよいと思う。
Lie群をその閉部分群で割った homogeneous space のコホモロジーも重要である。 特に,
特別な部分群の場合には代数的にきれいに表わされることが多い。
Lie群 \(G\) の分類空間のコホモロジーと, \(G\) の位相を忘れた, つまり離散位相を入れた群 \(G^{\delta }\) の分類空間のコホモロジーの関係を調べることを,
Milnor [Mil83] が提案している。Milnor は正標数の体を係数とすると, 同型になることを予想していて, Milnor
予想と呼ばれている。
- Lie 群のコホモロジーに関する Milnor 予想
この「正標数」という条件は, Lie群を \(\R \) という標数 \(0\) の体上で定義された代数群とみなすと納得できる。 つまり,
定義されている標数と異なる標数を係数とするということである。 この視点から, Friedlander は, 代数群に対する類似の予想を提案している。
Friedlander-Milnor 予想と呼ばれている。
Friedlander の [Fri08] によると, 1970年代前半から考えていたようである。 \(\mathbb {A}^{1}\)-homotopy theory
からのアプローチについては, Morel の [Mor11] を見るとよい。 現在の状況については, この MathOverflow
での議論を見るのがよい。
Ordinary cohomology が分かったら, 次は \(K\)-theory だろうか。まず, Hodgkin [Hod67] により compact
semisimple Lie 群の \(K\)-theory は, 外積代数であることが示されている。その Fourier-Mukai transform
を用いた別証が Baraglia と Hekmati の [BH15] にある。
他の 一般コホモロジーについても, いくつか計算例がある。例えば, Morava \(K\)-theory については, Mimura と
Nishimoto の [MN02] がある。
以上は, 代数的トポロジーの視点からの(コ)ホモロジーである。 代数の視点からは別の(コ)ホモロジーが提案されている。 有限群 (離散群)
のコホモロジーでは, \(G\)-module \(M\) に係数を持つ, ホモロジー代数的に定義されたコホモロジーと分類空間 \(BG\) の 局所係数の特異コホモロジーが同型になるが,
その類似を考えようとすると \(G\) の位相も考慮した \(G\)-module を考えないといけない。 つまり, \(G\)が連続的に作用するtopological Abelian
group である。 そのような Lie群のコホモロジーも考えられている。 Wockel [Woc] によると, 1950年代に van Est
により調べられたようである。
この二つのコホモロジーを統一する枠組みとして Wagemann と Wockel が [WW15] で導入したものがある。それ以前には,
Segal [Seg70], Deligne [Del74], Moore [Moo76], Cattaneo [Cat77], Brylinski [Bry],
Flach [Fla08] などの試みがある。
Brylinski [Bry] は differentiable cohomology と呼んでいるが, 最近は同じような名前で別のものを指すことが多い。
Wockel [WW15; Woc] は topological group cohomology と呼んでいるが, その方が良いだろう。
- Lie群の topological group cohomology
References
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戸田宏 and 三村護. リー群の位相(上). Vol. 14-A. 紀伊國屋数学叢書. 東京: 紀伊國屋書店, 1978.
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[戸三79]
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戸田宏 and 三村護. リー群の位相(下). Vol. 14-B. 紀伊國屋数学叢書. 東京: 紀伊國屋書店, 1979.
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