小圏は, 4つのデータから成る: object の集合, morphism の集合, composition, 各objectに対する identity
morphism である。 位相圏や, より一般に, ある圏の small category object を定義するためには, 小圏 を object
の集合と morphims の集合とそれらの間の structure map の条件として記述しておく必要がある。
- small category \(C\) を objectの集合 \(C_0\) と morphism の集合 \(C_1\) とそれらの間の写像 \[ \begin {split} s & : C_1 \longrightarrow C_0 \\ t & : C_1 \longrightarrow C_0 \\ \circ & : C_1\times _{C_0} C_1 \rarrow {} C_1 \\ 1 & : C_0 \longrightarrow C_1 \end {split} \]
に関する条件で記述すること。ここで \(C_1\times _{C_0} C_1\)は 次のfiber productである: \[ \xymatrix { C_1\times _{C_0} C_1 \ar [r] \ar [d] & C_1 \ar [d]^{t} \\ C_1 \ar [r]_{s} & C_0 } \]
このように小圏を表しておけば, structure map \(\circ , s, t, 1\) の連続性により, 位相圏を定義することができる。 そしてより一般に, object や
morphism の集合がある構造を持った圏を考えることもできる。 もっともそのためには, Day と Street が [DS04]
で書いているように monoid の一般化と考えた方がよい。
つまり small category を積を持つ quiver とみなすわけであるが, quiver に対しては, その表現が良く調べられている。
より一般に small category の表現を考える方が自然である。
- small category \(X\) の Abelian category \(\bm {A}\) での表現とは, 関手 \[ F : X \longrightarrow \bm {A} \] のこと。
- quiver \(Q\) の表現とは, \(Q\) で生成された free small category の表現のこと。
このように考えると, poset や群などのような, small category と見なせる構造を統一して扱えて便利である。 Poset
を扱う際には, その incidence algebra が重要であるが, その定義は small category に一般化できる。
Bessis は, [Bes] で, 部分的に composition が定義された quiver を germ という名前で呼び, それから生成された
free small category を定義している。
- germ とそれから定義された free small category
Small category に対する構成の内, coequalizer については, Bednarczyk らの [BBP99]
がある。
Babson と Kozlov は [BK05] で群の作用による poset の quotient を考えるために, loopfree category
という概念を導入している。Kozlov の本 [Koz08] では acylic category と呼ばれている。ここでは, acyclic category
と呼ぶことにしよう。これは poset と一般の small category の中間に位置する概念として有用な概念に思われる。
有限 poset を表示する方法として, Hasse diagram がある。そして, object の集合上に rank function
が定義される。これを一般化して, 様々な rank 付きの small category が考えられている。
各 object の endmorphism が isomorphism しかないものは, EI category と呼ばれている。
小圏と poset の関係としては, del Hoyo の [Hoy08] で調べられている barycentric subdivision
によるものがある。
- small category の barycentric subdivision は acyclic category
- acyclic category の barycentric subdivision は poset, よって任意の小圏 \(X\) に対し, \(\mathrm {Sd}^2(X)\) は poset
になる
- \(BX\) と \(B\mathrm {Sd}(X)\) はホモトピー同値
このように, 小圏を poset の一般化として考え, 組み合せ論の対象とみなすことも最近は多い。 例えば, Leinster
は小圏の Möbius関数 を [Lei08] で定義している。Leinster は, 更に小圏の Euler characteristic
も定義している。
圏論的な極限を考えるときは, 小圏はその index category として現れる。その際には filtering という条件は有用である。
- 小圏が, filtering であることの定義 (例えば Bass の [Bas68])
Small category (topological category) を幾何学的対象として扱う際には, 次の構成が重要である。
- small (topological) category \(C\) の nerve \(N_*(C)\)
- small (topological) category \(C\) の 分類空間 \(BC\)
このように, 位相空間や simplicial set と比較できるので, 幾何学的対象とみなすこともできる。特に,
位相空間などで定義された概念の類似が定義できることが多い。
- small category の covering
- small category の基本群
Small category の covering や基本群については, 代数学の研究者により, 古くから調べられてきた。\(k\)-algebra は
object 1つの \(k\)-linear category とみなすことができるからである。Bongartz と Gabriel の [BG82], Cibils と
Redondo と Solotarの[CRS12] などを見るとよい。それらは \(k\)-linear category で議論しているが, 定義は \(k\)-linear
でない場合にも \(\oplus \) を \(\amalg \) に変えればそのまま使える。ただし Cibils と Redondo と Solotar の [CRS12] の
intrinsic fundamental group は \(k\)-linear な場合のみ定義される。また, それらの定義は, quiver や
relation を持った quiver にも拡張できる。例えば, Le Meur の [Le 07] など。 Leinster の意味の
Euler標数や zeta関数の視点から, ramified covering を定義するという試みもある。Noguchi の [Nog14]
である。
- small category の ramified covering
ある小圏 \(C\) から小圏の圏への関手 \[ F : C \longrightarrow \category {Cat} \] からは, Grothendieck construction という操作で新しい小圏を作ることができる。
より一般に, (op)lax functor に対してもその定義をそのまま用いることができる。
Discrete な場合には, small category の分類空間の性質については, Quillen の [Qui73]
を見るとよい。そこで用いられている fibered category などの概念は, 元々は, Grothendieck [SGA171]
により導入されたものである。
References
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A. Grothendieck. Revêtements étales et groupe fondamental.
Séminaire de Géométrie Algébrique du Bois Marie 1960–1961 (SGA
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