Quiver

Quiver は, 頂点とその間を結ぶ矢印から成るので small category に良く似ているが, “矢印の合成”は定義されていない。 矢印の向きを考えないと グラフになるが, quiver のことをグラフと呼んでいる文献も多いのでややこしい。 Quiver のことを directed graph と呼ぶ人も多い。Small category の定義を参考に考えると, もっとも一般的で単純な quiver の定義は次のものだろう:

  • quiver とは二つの写像 \(s,t : E \to V\) の組のことである。

よって small category の category から quiver の category へ forgetful functor がある。逆に quiver が与えられれば, その矢印で生成された “free small category” (path category) を作ることができる。つまり, forgetful functor が left adjoint を持つ。Quiver の 表現も, この free category の表現として定義できる。

  • quiver の category と “free small category” の category が同値なこと [CR02]
  • quiver の表現とは, quiver から生成されるfree small categoryから Abelian category への関手のこと

その small category から得られる代数的データとして path algebra と呼ばれる associative algebra がある。また, ある一定の長さ以上の path を無視した truncated path algebra (truncated quiver algebra) というものも一般的である。更に, preprojective algebra という algebra も定義される。

Quiver から作られる algebra としては, path algebra に relation を入れたものが代表的であるが, path algebra の構成と small category の nerve の構成の類似性から, small category のホモトピー論に関することを, quiver や quiver with relation に一般化しようというのは自然なアイデアである。 そのようなものの代表として, 基本群がある。 また 分類空間の類似も考えられる。

Path category の定義からも分かるように, quiver を扱うときには, その上の path が基本な情報である。Path category 以外にも様々なものが定義される。 たとえば, Turner と Wigner の [TW12] や Favero と Huang の [FH] では, path の集合から poset が定義されている。 Turner と Wigner のものは, disjoint な path の族の集合の成す poset であり, Favero と Huang のものは, 1本の path から成る poset であるが。 共に, path poset と呼ばれているが, まぎらわしいので, Caputi らの [CCT] のように, Turner と Wigner のものは multipath poset と呼ぶべきだろう。

  • path poset
  • multipath poset

Caputi らは, multipath poset を使い multipath homology という quiver の homology を定義している。他にも, quiver の homology は色々定義されている。

全く異なる見方として, quiver を measure space とみなす, というものがある。Lovász の [Lov21] など。 平行辺や loop の無い quiver \(Q\) は \(Q_{1}\subset Q_{0}\times Q_{0}\) とみなすことができ, \(Q_{0}\times Q_{0}\) 上の counting measure が定まっている, という視点である。関連して, この Lovász の論文では, quiver 上の flow についても書かれている。

  • quiver 上の flow

Quiver から作られた chain complex として, Kontsevich の graph complex がある。

Quiver に associate した幾何学的なものとして, quiver variety がある。 Kronheimer と Nakajima の [KN90] で構成された, ALE space 上の anti-self-dual connection の moduli space の一般化として, Nakajima [Nak94] により導入されたものである。Harada と Proudfoot の [HP05] では, このことについては [Nak96] を見るようにと書いてある。

  • quiver の表現に associate した variety (quiver variety)

\(A_n\)型の quiver の場合, Ginzburg によって別の方法で定義されたものとの比較を Maffei [Maf05] が行なっている。Maffei は [Maf02] では quiver variety への Weyl 群の作用を定義している。

Quiver の表現は, 代数多様体をその上の coherent sheaf の derived category で調べるときにも使われる。 Dynkin diagram から得られる quiver の場合, quiver の表現の圏の Hall algebra から, 対応する Lie 環の universal enveloping algebra が得られるというのが, 有名な Ringel の結果 [Rin90] である。

Quiver の表現については, Berstein, Gel\('\)fand, Ponomarev の reflection functor の理論 [BGP73] があるが, Groth と Šťovíček [GŠ18] は, その small category への拡張を行なっている。また, 表現として stable derivator に値を持つものへの拡張も行なっている。

  • reflection functor

Quiver から群を作る方法としては, Matumoto の [Mat89] もある。 それを functor として拡張したのが, Przezdiecki の [Prz14] である。

Quiverに様々な構造を入れたものも色々考えられている。

References

[BGP73]

I. N. Bernšteı̆n, I. M. Gel\('\)fand, and V. A. Ponomarev. “Coxeter functors, and Gabriel’s theorem”. In: Uspehi Mat. Nauk 28.2(170) (1973), pp. 19–33.

[CCT]

Luigi Caputi, Carlo Collari, and Sabino Di Trani. Multipath cohomology of directed graphs. arXiv: 2108.02690.

[CR02]

Claude Cibils and Marc Rosso. “Hopf quivers”. In: J. Algebra 254.2 (2002), pp. 241–251. arXiv: math/0009106. url: http://dx.doi.org/10.1016/S0021-8693(02)00080-7.

[FH]

David Favero and Jesse Huang. Homotopy Path Algebras. arXiv: 2205.03730.

[GŠ18]

Moritz Groth and Jan Šťovíček. “Abstract tilting theory for quivers and related categories”. In: Ann. K-Theory 3.1 (2018), pp. 71–124. arXiv: 1512.06267. url: https://doi.org/10.2140/akt.2018.3.71.

[HP05]

Megumi Harada and Nicholas Proudfoot. “Hyperpolygon spaces and their cores”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 357.4 (2005), 1445–1467 (electronic). arXiv: math/0308218. url: http://dx.doi.org/10.1090/S0002-9947-04-03522-6.

[KN90]

Peter B. Kronheimer and Hiraku Nakajima. “Yang-Mills instantons on ALE gravitational instantons”. In: Math. Ann. 288.2 (1990), pp. 263–307. url: http://dx.doi.org/10.1007/BF01444534.

[Lov21]

László Lovász. “Flows on measurable spaces”. In: Geom. Funct. Anal. 31.2 (2021), pp. 402–437. arXiv: 2008.10101. url: https://doi.org/10.1007/s00039-021-00561-9.

[Maf02]

Andrea Maffei. “A remark on quiver varieties and Weyl groups”. In: Ann. Sc. Norm. Super. Pisa Cl. Sci. (5) 1.3 (2002), pp. 649–686. arXiv: math/0003159.

[Maf05]

Andrea Maffei. “Quiver varieties of type A”. In: Comment. Math. Helv. 80.1 (2005), pp. 1–27. arXiv: math/9812142. url: https://doi.org/10.4171/CMH/1.

[Mat89]

Takao Matumoto. “Any group is represented by an outerautomorphism group”. In: Hiroshima Math. J. 19.1 (1989), pp. 209–219. url: http://projecteuclid.org/euclid.hmj/1206129490.

[Nak94]

Hiraku Nakajima. “Instantons on ALE spaces, quiver varieties, and Kac-Moody algebras”. In: Duke Math. J. 76.2 (1994), pp. 365–416. url: http://dx.doi.org/10.1215/S0012-7094-94-07613-8.

[Nak96]

Hiraku Nakajima. “Varieties associated with quivers”. In: Representation theory of algebras and related topics (Mexico City, 1994). Vol. 19. CMS Conf. Proc. Providence, RI: Amer. Math. Soc., 1996, pp. 139–157.

[Prz14]

Adam J. Przeździecki. “An almost full embedding of the category of graphs into the category of abelian groups”. In: Adv. Math. 257 (2014), pp. 527–545. arXiv: 0912.0510. url: https://doi.org/10.1016/j.aim.2014.02.027.

[Rin90]

Claus Michael Ringel. “Hall algebras and quantum groups”. In: Invent. Math. 101.3 (1990), pp. 583–591. url: http://dx.doi.org/10.1007/BF01231516.

[TW12]

Paul Turner and Emmanuel Wagner. “The homology of digraphs as a generalization of Hochschild homology”. In: J. Algebra Appl. 11.2 (2012), pp. 1250031, 13. arXiv: 1001.5379. url: https://doi.org/10.1142/S0219498811005555.