ホモロジー代数は, chain complex とそのホモロジーを扱うための理論として登場した。
Chain complex とは半分だけ完全な列であり, ホモロジーとは, その「非完全性」 を測るものだから,
まずは完全列の扱いがホモロジー代数の基礎である。
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five Lemma
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snake Lemma
- \(3\times 3\) Lemma
また, ホモロジー代数的にはある関手の性質は, その関手で写したときにどれだけ完全性が崩れるかにより調べる。いわゆる derived
functor (導来関手) である。
例えば, 普遍係数定理や群のコホモロジーの定義に現われる関手 \(\Ext \) は \(\Hom \) の導来関手 (derived functor) である。
- left exact functor と right exact functor
Derived functor を定義 (構成) するときには, object の良い resolution を選ぶ必要がある。基本は projective
resolution と injective resolution である。
- free module
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projective module
- projective module の直和は projective
- projective module の直和成分は projective
- free module は projective
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divisible module
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injective module
- injective module の直積は injective
- injective module の直積成分は injective
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flat module
Projective object や injective object は, より一般の category で定義できる。
これらを用いて resolution を定義し, left あるいは right exact functor の derived functor
を定義する。
- \(R\)-moduleのprojective resolution と injective resolution
- derived functor
\(\Hom \) は, 左成分で projective resolution を取っても, 右成分で injective resolution を取っても同じ derived
functor を得るが, このような functor の一般化を balanced functor として Cartan と Eilenberg が既に
[CE99] が導入している。 その拡張が, Enochs と Jenda [EJ85] により定義されている。
よく使われる spectral sequence の \(E^2\)-term は derived functor として書ける場合が多い。 更に, Baues と
Blanc [BBC21] は, spectral sequence の高次の項を表わすための higher derived functor
を考えている。
Derived functor の例としては, まずは \(\Tor \) と \(\Ext \) を知っておくべきだろう。
- 環 \(R\) と right \(R\)-module \(M\) とleft \(R\)-module \(N\) に対し \(\Tor ^R_n(M,N)\) の定義
- 環 \(R\) と left \(R\)-module \(M\) と left \(R\)-module \(N\) に対し \(\Ext _R^n(M,N)\) の定義
- 短完全列 \[ 0 \longrightarrow N_1 \longrightarrow N_2 \longrightarrow N_3 \longrightarrow 0 \] に対し長い完全列 \[ \begin {split} 0 \longrightarrow \Hom _R(M,N_1) \longrightarrow & \Hom _R(M,N_2) \longrightarrow \Hom _R(M,N_3) \longrightarrow \\ & \Ext ^1_R(M,N_1) \longrightarrow \Ext ^1(M,N_2) \longrightarrow \Ext ^1(M,N_3) \longrightarrow \cdots \end {split} \] がある
- 短完全列 \[ 0 \longrightarrow M_1 \longrightarrow M_2 \longrightarrow M_3 \longrightarrow 0 \] に対し長い完全列 \[ \begin {split} 0 \longrightarrow \Hom _R(M_3,N) \longrightarrow & \Hom _R(M_2,N) \longrightarrow \Hom _R(M_1,N) \longrightarrow \\ & \Ext ^1_R(M_3,N) \longrightarrow \Ext ^1(M_2,N) \longrightarrow \Ext ^1(M_1,N) \longrightarrow \cdots \end {split} \] がある
- \(\Tor \) についても同様の長い完全列がある
これらの完全列から projective module と injective module の定義の言い換えが得られる。
- \(M\) が projective であることと, 任意の \(N\) に対し \(\Ext ^1_R(M,N)=0\) であることは同値
- \(N\) が injective であることと, 任意の \(M\) に対し \(\Ext ^1_R(M,N)=0\) であることは同値
もちろん, このような単純な言い換えでないもっと有用な projective module や injective module
の特徴付けや具体的な例を知っている必要がある。 例えば次のようなものがある。これらはどの教科書にも書いてあると思う。 ただ “Injective
Test Lemma” は Hilton と Stammbach の本 [HS97] では演習問題になっている。Osborne の本 [Osb00] や
Cartan と Eilenberg の本 [CE99] には証明がある。
- projective module であるための必要十分条件は, free module の直和成分であること。
- (Injective Test Lemma) 環 \(R\) 上の左加群 \(M\) が injective module であるための必要十分条件は,
任意の左 ideal \(\mathfrak {a}\) と準同形 \[ f : \mathfrak {a} \longrightarrow M \] が, 拡張 \[ \tilde {f} : R \longrightarrow M \] を持つこと, つまり \[ \Hom _R(R,M) \longrightarrow \Hom _R(\mathfrak {a},M) \] が全射であることである。
- 可換環 \(R\) が principal ideal domain (PID) のとき, \(R\)-module がprojective であることと free
であることは同値である。
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可換環 \(R\) が PID のとき, \(R\)-module \(M\) が injective であるための必要十分条件は, 任意の \(0\) でない \(r \in R\) に対し \(r\)
倍する写像 \[ r\cdot : M \longrightarrow M \] が全射であること, つまり \(M\) が divisible であることである。
特に, Abel群では divisible と injective が一致する。
Divisible module については以下の性質がある。
- Divisible module の quotient module は divisible である。
- \(k\) が体のとき, 任意の \(k\)-module はdivisible である。 よって, subring \(R \subset k\) に対し, \(k\)-module を \(R\)-module
とみなすと, divisible \(R\)-module である。
- \(\Q \) や \(\Q /\Z \) は Abel群の圏の injective object である。
- \(G\) が injective (よって divisible) Abelian group ならば, 任意の \(R\)-module \(M\) に対し \(\Hom _{\Z }(M,G)\) は injective
\(R\)-module である。
Injective module や projective module の \(\Ext \) による特徴付けを一般化したものとして Salce [Sal79] による
cotorsion pair という概念がある。
ホモロジー代数を chain complex の圏の model category の構造の研究とみなすとき, cotorsion pair
をモデル圏の言葉でどう解釈するかというのは自然な問題であるが, これについては, Hovey が [Hov02] で Abelian model
category の理論として解決している。
References
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[BBC21]
-
Hans-Joachim Baues, David Blanc, and Boris Chorny. “Truncated
derived functors and spectral sequences”. In: Homology Homotopy
Appl. 23.1 (2021), pp. 159–189. arXiv: 1210 . 7437. url:
https://doi.org/10.4310/hha.2021.v23.n1.a10.
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[CE99]
-
Henri Cartan and Samuel Eilenberg. Homological algebra. Princeton
Landmarks in Mathematics. With an appendix by David A.
Buchsbaum, Reprint of the 1956 original. Princeton, NJ: Princeton
University Press, 1999, pp. xvi+390. isbn: 0-691-04991-2.
-
[EJ85]
-
Edgar E. Enochs and Overtoun M. G. Jenda. “Balanced functors
applied to modules”. In: J. Algebra 92.2 (1985), pp. 303–310. url:
https://doi.org/10.1016/0021-8693(85)90122-X.
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[Hov02]
-
Mark Hovey. “Cotorsion pairs, model category structures, and
representation theory”. In: Math. Z. 241.3 (2002), pp. 553–592. url:
http://dx.doi.org/10.1007/s00209-002-0431-9.
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[HS97]
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P. J. Hilton and U. Stammbach. A course in
homological algebra. Second. Vol. 4. Graduate Texts in Mathematics.
Springer-Verlag, New York, 1997, pp. xii+364. isbn: 0-387-94823-6.
url: http://dx.doi.org/10.1007/978-1-4419-8566-8.
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[Osb00]
-
M. Scott Osborne. Basic homological algebra. Vol. 196. Graduate
Texts in Mathematics. New York: Springer-Verlag, 2000, p. x 395.
isbn: 0-387-98934-X.
-
[Sal79]
-
Luigi Salce. “Cotorsion theories for abelian groups”. In: Symposia
Mathematica, Vol. XXIII (Conf. Abelian Groups and their
Relationship to the Theory of Modules, INDAM, Rome, 1977).
Academic Press, London-New York, 1979, pp. 11–32.
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