群 \(G\) と非負整数 \(n\) に対し, \((G,n)\) 型の Eilenberg-Mac Lane space とは, ホモトピー群が \(n\)次で \(G\) に同型になり,
それ以外は自明であるような空間のことである。当然, \(n>1\) ならば, \(G\) は Abel群であると仮定する。 逆に \(n=1\) のときは, \(G\) が任意の群になり得るので, \(n>2\)
のときとは趣きの異なる空間である。
CW複体として作ればそのホモトピー型は一意的に決まるので, 一つの空間のように考えて, \(K(G,n)\) と表わすのが普通である。
かつては, \(G\) に係数を持つ \((n+1)\)次元 Moore空間 \(M(G,n)\) から始めて, それに cell を貼り付けて, \((n+1)\)次元以上のホモトピー群を消して \(K(G,n)\)
を得た。この方法は, functorial ではないが, とりあえず存在を示すことはできる。
その定義から, 弱ホモトピー同値 \[ \Omega K(G,n) \relation {\simeq }{w} K(G,n-1) \] があり, \(\Omega \)-spectrum の基本的な例となっている。
また, path-loop fibration \[ K(G,n-1) \longrightarrow PK(G,n) \longrightarrow K(G,n) \] があり, この fibration に対する Serre ペクトル系列を用いて,
\(K(G,n)\)の(コ)ホモロジーを決定することはできる。 実際, これが最初に Cartan と Serre が行なった方法である。 これは
Serreスペクトル系列の良い練習問題であり, 代数的トポロジーを志す人は一度はやってみるべきである。 ただし, コホモロジー作用素の知識が必要になる。
- 素数 \(p\) に対し, Eilenberg-Mac Lane 空間 \(K(\Z /p\Z ,n)\) の \(\F _{p}\) 係数コホモロジー環
胞体を貼り付けて作る方法よりは, Dold と Thom [DT58] がやったように, その Moore空間の無限 対称積, \(\mathrm {Sp}^{\infty }(M(G,n))\) を考える方が,
まだましである。 実際, equivariant cohomology に対する Eilenberg-Mac Lane spectrum は, dos
Santos と Nie の [SN] で equivariant Dold-Thom theorem を用いて構成されている。
最も systematic なのは, Milgram が行なった bar構成によるもの [Mil67] だろう。 Milgram は
bar構成を用いて Abel群 \(G\) に対し \(BG\) が位相アーベル群の構造を持つことを示した。 離散位相により \(G = K(G,0)\) とみなすと \[ K(G,n) = B K(G,n-1) \] と表わせるので, bar
spectral sequence を使うことができる。実際 Ravenel と Wilson [RW80] は, bar spectral sequence と
Hopf ring の概念を用いて, Eilenberg-Mac Lane 空間のMorava \(K\)理論を決定した。 彼等の議論は ordinary
homology に対しても, もちろん, うまくいき, bar spectral sequence のよい練習になる。
Ravenel と Wilson によって導入された, この Hopf ring の概念は, 積を持つ spectrum
に同伴した無限ループ空間のホモロジーを計算するのに, 非常に有効である。
Peterson [Pet] は, この Ravenel と Wilson の結果を Morava \(E\)-theory に拡張 (deform)
している。
Powell は, [Pow06] で Eilenberg-Mac Lane 空間のコホモロジーの unstable \(\mathcal {A}_2\)-module としての
endomorphism ring を調べている。 より一般に, \(\F _2\) 上のベクトル空間 \(V\) と \(W\) に対し \[ \Hom _{\mathcal {U}}(H^*(K(V,n)),H^*(K(W,n))) \cong \F _2[\Hom (V,W)] \] であることが示されている。
Simplicial Abelian group としての モデルは, Staic の [Sta13] がある。
Eilenberg-Mac Lane space は, 表現論にも登場するようである。Touzé の [Tou14] など。 Homotopy
type theory でも扱えるようになった。
Motivic homotopy theory での類似は, Voevodsky [Voe10] により考えられている。 そのアイデアは, 既に
[Voe98] に登場するが, それによると 1987 年頃の Suslin のアイデアらしい。
一般化としては, intersection (co)homology での類似もある。 Chataur と Tanré の [CT]
である。
References
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[CT]
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http://dx.doi.org/10.2307/2374093.
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J. Aust. Math. Soc. 95.1 (2013), pp. 133–144. arXiv: 1011.4132. url:
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Antoine Touzé.
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Vladimir Voevodsky. “Motivic Eilenberg-MacLane spaces”. In: Publ.
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[Voe98]
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Vladimir Voevodsky. “\(\mathbf {A}^{1}\)-homotopy theory”. In: Proceedings of the
International Congress of Mathematicians, Vol. I (Berlin, 1998).
Extra Vol. I. 1998, 579–604 (electronic).
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