Simplicial Abelian group や simplicial module

Simplicial Abelian group は, chain complexと深い関係にある。 トポロジーでは, 位相空間の singular chain complex の文脈で古くから調べられてきた。 古い文献で, singular chain complex について述べてあることは, 実はより一般の simplicial Abelian group の Moore complex について成り立つことが多い。もちろん, simplicial group でも成り立つこともある。

特異 chain complex で行なったように, simpilicial Abelian group からは chain complex が作られる。便利なのは, それを正規化 (normalize) したものである。

  • simplicial Abelian group \(A_{\bullet }\) に対し, それに associate した chain complex (Moore complex) と normalized chain complex

Normalized chain complex の定義には, 二種類あることに注意する。つまり degeneracy の image で割るのと, boundary の kernel を取るの, である。 しかしこれらは, chain complex として同型になる。

  • 二種類の normalized chain complex の定義が, 同型な chain complex を与えること
  • simplicial Abelain group に対し, その Moore complex と normalize された Moore complex は chain homotop y同値であること
  • simplicial Abelian group に対し, 一般化された Eilenberg-Zilber の定理が成り立つこと

以上のことについては, Goerss と Jardine の本 [GJ09] を見るのがよいだろう。

Simplicial Abelian groupの圏とchain complexの圏の対応は Dold-Kan correspondence と呼ばれることが多い。その一般化や変種も知られている。

Goerss と Schemmerhorn が [GS07] で述べているように, Dold-Kan correspondence を用いて chain complex の圏の モデル圏の構造を simplicial Abelian group の圏に移すことができる。

  • simplicial Abelian group, より一般に simplicial \(R\)-module の圏のモデル構造

この対応により, projective resolution に対応する simplicial module が simplicial resolution と呼ばれるものである。

  • simplicial resolution

このように, 古典的なホモロジー代数にお けるresolutionの概念をsimplicialな圏でのresolutionに置き換えると, Abel圏ではないところでも ホモロジー代数の類似が できる。例えば, 可換環のAndré-Quillen (co)homologyなど。その際, モデル圏の概念が, 中心的な役割を果していることに注意すべきである。

References

[GJ09]

Paul G. Goerss and John F. Jardine. Simplicial homotopy theory. Modern Birkhäuser Classics. Reprint of the 1999 edition [MR1711612]. Birkhäuser Verlag, Basel, 2009, pp. xvi+510. isbn: 978-3-0346-0188-7. url: https://doi.org/10.1007/978-3-0346-0189-4.

[GS07]

Paul Goerss and Kristen Schemmerhorn. “Model categories and simplicial methods”. In: Interactions between homotopy theory and algebra. Vol. 436. Contemp. Math. Providence, RI: Amer. Math. Soc., 2007, pp. 3–49. arXiv: math/0609537. url: http://dx.doi.org/10.1090/conm/436/08403.