多様体について, 基本的なことを手っ取り早く学ぼうと思ったら, Milnor の本 [Mil97] を読むというのが一つの手である。小さな本であるが,
他の Milnor の本と同様, 幾何学的なアイデアが非常に明解に説明してある。
多様体とは, 局所的に Euclid 空間と同一視できるものとして定義されるが, Euclid 空間のどの性質に着目するかで,
様々な種類の多様体が考えられる。 Euclid 空間の位相空間としての性質のみ必要なら位相多様体でよいが, Euclid
空間の間の可微分写像の拡張を考えたいなら, 可微分多様体という概念が必要になる。
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位相多様体 (topological manifold)
- PL 多様体
- 可微分多様体 (smooth manifold)
また, 向きなどを考えようとすると, tangent bundle (あるいはそれに associate した principal bundle)
の構造を考える必要がある。
- tangent bundle
- normal bundle
可微分多様体の部分多様体に対しては, normal bundle の unit disk bundle と同相な tubular
neighborhood が定義される。位相多様体や PL 多様体では, regular neighborhood が定義される。
単体的複体でも定義されるが。
局所座標に条件を付けたり tangent bundle に構造を付加すると, 多様体に様々な構造を定義することができる。
このように, 多様体にある幾何学的構造を入れたものを統一的に扱う方法として, Thurston は [Thu97] で pseudogroup
を用いることを提唱している。 可微分多様体, 実解析的多様体, foliation, 複素多様体, 双曲多様体等が, この \(\mathcal {G}\)-manifold
の概念で扱える。
- pseudogroup \(\mathcal {G}\) に対し \(\mathcal {G}\)-manifold の定義
- 群 \(G\) が多様体 \(X\) に作用しているとき, \((G,X)\)-manifold の定義
球面 \(S^n\) の Möbius transformation の成す群 \(M_n\) をモデルにした \((M_n,S^n)\)-manifold を Möbius manifold
というらしい。Gorinov の [Gor04] は, その cobordism を扱っている。
ホモトピー論的には, tangent bundle の分類写像を考えたい。 位相多様体 \(M\) に対しては, tangent microbundle
が定義され, \(\dim M=n\) のとき, \(\R ^{n}\) の自己同相群を \(\mathrm {Top}(n)\) とおくと, それは連続写像 \(M\to B\mathrm {Top}(n)\) で分類される。これを用いると, \(M\) の smooth structure
はこの写像の (up to homotopy) での lift \[ \xymatrix { & BO(n) \ar [d] \\ M \ar [ur] \ar [r] & B\mathrm {Top}(n) } \] のことである。 Ayala と Francis [AF15] は, この考え方に基いて,
任意の空間 \(B\) に対し \(B\)-framing の概念を導入している。
Euclid 空間ではなく, Euclid 空間の中の半空間や Euclid 空間を有限群の作用で割った空間をモデルにしたものもある。
無限次元の vector space をモデルにすれば, 無限次元多様体が定義できる。 (多様体上の) loop space や Lie 群の
分類空間のように, 代数的トポロジーで popular な空間で, 無限次元多様体の構造を持つものもある。
その他多様体の一般化については以下にまとめた。
Euclid空間をモデルにした場合でも, コンパクトではない多様体については, end を考えたり compactification をしたりと,
色々工夫をしないといけない。 例えば Guilbault の [Gui16] を見てみるとよい。
多様体一般に関する基本的な事項としては, 以下の言葉を知っている必要がある。
コボルディズムは, René Thom によって発見された概念であり, 代数的トポロジーでは, 安定ホモトピー論で非常に重要な役割を果してきた。
もちろん, geometric topology で重要なことは言うまでもない。
可微分な場合には, tangent bundle が定義でき, 多様体を調べる際の基本的な道具となる。位相多様体や \(PL\) 多様体の場合には,
vector bundle ではなく microbundle として考えるべきである。
- tangent bundle と tangent microbundle
コボルディズムは様々な種類の多様体に対して定義される: 可微分多様体, \(PL\)多様体, 位相多様体, framed manifold,
弱複素多様体などである。
これらのコボルディズム理論について学ぶには, Stong の本 [Sto68] が最も便利かもしれない。
コボルディズムのために必要なこととしては以下が挙げられる。
- 多様体の 埋め込み (embedding) と嵌め込み (immersion)
- smooth manifold の間の smooth map \[ f : M \longrightarrow N \] と \(M\) の部分多様体 \(W\) に対し, \(f\) と \(W\) が横断正則 (transversal)
であることの定義
- Thomの横断正則性 (transversality) 定理
References
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[AF15]
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David Ayala and John Francis. “Factorization homology of topological
manifolds”. In: J. Topol. 8.4 (2015), pp. 1045–1084. arXiv: 1206.5522.
url: http://dx.doi.org/10.1112/jtopol/jtv028.
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[Gor04]
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A. G. Gorinov.
“The cobordism group of Möbius manifolds of dimension 1 is trivial”.
In: Topology Appl. 143.1-3 (2004), pp. 75–85. arXiv: math/0605573.
url: https://doi.org/10.1016/j.topol.2004.02.006.
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Craig R. Guilbault. “Ends, shapes,
and boundaries in manifold topology and geometric group theory”. In:
Topology and geometric group theory. Vol. 184. Springer Proc. Math.
Stat. Springer, [Cham], 2016, pp. 45–125. arXiv: 1210.6741. url:
https://doi.org/10.1007/978-3-319-43674-6_3.
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[Mil97]
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John W. Milnor. Topology from the differentiable viewpoint. Princeton
Landmarks in Mathematics. Based on notes by David W. Weaver,
Revised reprint of the 1965 original. Princeton, NJ: Princeton
University Press, 1997, pp. xii+64. isbn: 0-691-04833-9.
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[Sal86]
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S. M. Salamon. “Differential geometry of quaternionic manifolds”.
In: Ann. Sci. École Norm. Sup. (4) 19.1 (1986), pp. 31–55. url:
http://www.numdam.org/item?id=ASENS_1986_4_19_1_31_0.
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[Sto68]
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Robert E. Stong. Notes on cobordism theory. Mathematical notes.
Princeton, N.J.: Princeton University Press, 1968, pp. v+354+lvi.
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[Thu97]
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William P. Thurston. Three-dimensional geometry and topology. Vol.
1. Vol. 35. Princeton Mathematical Series. Edited by Silvio Levy.
Princeton, NJ: Princeton University Press, 1997, pp. x+311. isbn:
0-691-08304-5.
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