可微分多様体は, topological manifold に微分構造を指定したものである。微分構造は, 座標変換が可微分である局所座標系
(atlas) の同値類として定義されるので, 分かりづらい。
それを避ける一つの方法は, Spivak の本 [Spi65] や Milnor の本 [Mil97] の本のように, Euclid
空間の部分空間の場合に限定して考えることである。 Whitney の埋め込み定理 [Whi36; Whi44] により, 有限次元多様体の場合は,
Euclid 空間の部分多様体として考えても一般性を失わない。
- Whitney embedding theorem
もちろん, 無限次元多様体の場合には, 抽象的に定義しないといけない。 そのようなアプローチとして Lang の本 [Lan85] がある。
有限次元とは限らない Banach 空間をモデルとする多様体の定義から出発している。
Lang の本のもう一つの特徴は, 多様体を「集合\(+\)局所座標系」として定義していることである。 局所座標系が与えられると,
それにより位相が決まるからである。
可微分多様体では, 接空間が定義されるが, その定義にも様々なアプローチがある。 有名な Kobayashi と Nomizu の本
[KN96] のように, ある点 \(p\) の周りで定義された可微分関数の成す環上の, ある条件をみたす functional として定義するものが多いが,
直感的に何を意味しているのか分かりづらい。 Lang の本のように, 局所座標を用いたベクトルの同値類として定義するか, あるいは点 \(p\)
を通る曲線の同値類として定義する方が分かり易いと思う。
接空間を集めると tangent bundle という vector bundle ができる。Lang は, 可微分多様体と可微分多様体の成す圏から
vector bundle の成す圏への functor として定義している。 それを一般化したのが, Cockett らの tangent category
である。
そして, tangent bundle を用いて様々な構造が定義される。
-
cotangent bundle
- 可微分多様体の埋め込みに対し, その normal bundle
-
vector field
-
differential form
- current
- Riemann 計量
Novikov の [Nov08] によると, 微分形式の理論は Poincaré の発見に起源を持つらしい。 Terence Tao が
“Princeton Companion to Mathematics” のために書いた解説 [Tao] は, \(1\)変数関数の積分から書いてあり,
非常に分かりやすい。 微分形式の解説は他にも色々あるが, Bachman の本 [Bac06] は arXiv から download
できる。
可微分多様体の間の写像としては, まずは次のものを知っているべきだろう。
- immersion
- embedding
- submersion
- diffeomorphism
非可換幾何学, あるいは Gel’fand-Naimark duality の観点からは, 多様体の構造はその上の関数環に反映されるはずである。
- \(\F =\R \) または \(\bbC \) としたときの, 可微分多様体 \(M\) の \(\F \) に値を持つ可微分関数の成す環 \(C^{\infty }(M)\)
- その compact support を持つ関数の成す部分環 \(C_c^{\infty }(M)\)
実際, Mrcum は, [Mrč05] で次のことを証明している。
- \(C^{\infty }(M)\) と \(C^{\infty }(N)\) の間の同型は, 一意的に決まる微分同相写像 \(M \cong N\) により誘導される。
- Compact support を持つ関数の成す環についても同様のことが成り立つ。
Tangent bundle と cotangent bundle を組にして考えると, Courant algebroid という構造を得る。この意味での
extended manifold を考えたのが, Hu と Uribe の [HU09] である。
可微分多様体の入門として有名な Milnorの本 [Mil97] では, framed cobordismにも触れられている。つまり framed
manifold のコボルディズムである。
可微分多様体のコホモロジーを考えるときには, 微分形式との関連が基本的である。
Connection や curvature も微分形式で表わすものの代表である。より一般に, 可微分多様体と smooth map から成る
fiber bundle (smooth fiber bundle) を考え, connection や jet などの概念を考えることができる。
References
-
[Bac06]
-
David Bachman. A geometric approach to differential forms.
Boston, MA: Birkhäuser Boston Inc., 2006, pp. xviii+133. isbn:
978-0-8176-4499-4; 0-8176-4499-7. arXiv: math/0306194.
-
[HU09]
-
Shengda Hu and Bernardo Uribe. “Extended manifolds and extended
equivariant cohomology”.
In: J. Geom. Phys. 59.1 (2009), pp. 104–131. arXiv: math/0608319.
url: https://doi.org/10.1016/j.geomphys.2008.10.004.
-
[KN96]
-
Shoshichi Kobayashi and Katsumi Nomizu. Foundations of differential
geometry. Vol. I. Wiley Classics Library. Reprint of the 1963 original,
A Wiley-Interscience Publication. John Wiley & Sons, Inc., New York,
1996, pp. xii+329. isbn: 0-471-15733-3.
-
[Lan85]
-
Serge Lang. Differential manifolds. Second. New
York: Springer-Verlag, 1985, pp. ix+230. isbn: 0-387-96113-5. url:
http://dx.doi.org/10.1007/978-1-4684-0265-0.
-
[Mil97]
-
John W. Milnor. Topology from the differentiable viewpoint. Princeton
Landmarks in Mathematics. Based on notes by David W. Weaver,
Revised reprint of the 1965 original. Princeton, NJ: Princeton
University Press, 1997, pp. xii+64. isbn: 0-691-04833-9.
-
[Mrč05]
-
Janez Mrčun. “On isomorphisms of algebras of smooth functions”. In:
Proc. Amer. Math. Soc. 133.10 (2005), 3109–3113 (electronic). arXiv:
math / 0309179. url:
http://dx.doi.org/10.1090/S0002-9939-05-07979-7.
-
[Nov08]
-
S. P. Novikov. “Dynamical systems and differential forms. Low
dimensional Hamiltonian systems”. In: Geometric and probabilistic
structures in dynamics. Vol. 469. Contemp. Math. Providence, RI:
Amer. Math. Soc., 2008, pp. 271–287. arXiv: math/0701461.
-
[Spi65]
-
Michael Spivak. Calculus on manifolds. A modern approach to
classical theorems of advanced calculus. W. A. Benjamin, Inc., New
York-Amsterdam, 1965, pp. xii+144.
-
[Tao]
-
Terrence Tao. Differential Forms and Integration. url:
https://www.math.ucla.edu/~tao/preprints/forms.pdf.
-
[Whi36]
-
Hassler Whitney. “Differentiable manifolds”. In: Ann. of Math. (2)
37.3 (1936), pp. 645–680. url:
http://dx.doi.org/10.2307/1968482.
-
[Whi44]
-
Hassler Whitney. “The self-intersections of a smooth \(n\)-manifold
in \(2n\)-space”. In: Ann. of Math. (2) 45 (1944), pp. 220–246. url:
https://doi.org/10.2307/1969265.
|