コファイブレーション

その名前が示唆するように, cofibration は, fibration双対概念である。

位相空間の間の fibration には, 任意の位相空間に対し被覆ホモトピー性質 (CHP) を持つ Hurewicz fibration と, CW複体に対し CHP を持つ Serre fibration ががあるが, cofibration は単に cofibration と言うことが多い。 その際には, 任意の位相空間に対しホモトピー拡張性質を持つものという意味で用いられることが多い。

  • ホモトピー拡張性質 (homotopy extension property)の定義
  • cofibration の定義
  • closed cofibration の定義

以下, 任意の位相空間に対しホモトピー拡張性質を持つものを考える。

最初に cofibration の性質を詳しく調べたのは, Støm の [Str66] と [Str68] だと思われる。以下はこれらの論文で示されていることであり, 重要な性質である。

  • \(i : A \to X\) が cofibration なら \(i\) は中への同相である。
  • \(i : A \to X\) が cofibration であることと \(X\times \{0\}\cup A\times I\) が \(X\times I\) の retract であることは同値である。
  • \(i : A \to X\) が closed cofibration であることと, 次の条件をみたす \((h,u)\) が存在することは同値である:
    • \(u : X \to I\)
    • \(h : X\times I \to X\)
    • \(A \subset u^{-1}(0)\)
    • \(h|_{X\times \{0\}} = 1_X\)
    • \(h(a,t) = a\) for \(a \in A\)
    • \(h(x,t) \in A\) if \(t>u(x)\)

最後の条件は, 現在では NDR pair の定義となっている。 組 \((h,u)\) は \((X,A)\) の NDR representation と呼ばれる。

典型的な例は, 写像柱 (mapping cylinder) や写像錐 (mapping cone) への包含写像である。

  • mapping cylinder
  • mapping cone

「ホモトピー論的」には以下の性質をよく使う。

  • cofibration \[ A \hookrightarrow X \] に対し, 次のホモトピー同値がある \[ X\cup CA \simeq X/A \]
  • 任意の連続写像は cofibration に変形できる。
  • 連続写像 \[ f : X \longrightarrow Y \] は cofibration の列 \[ X \rarrow{f} Y \longrightarrow C_f \longrightarrow \Sigma X \rarrow{\Sigma f} \Sigma Y \longrightarrow \cdots \] に拡張できること。

Cofibration の貼り合せが cofibration になるための条件については, Lillig の [Lil73] で調べられている。

Cofibration の概念は, fibration弱ホモトピー同値と共に, Quillen により導入された, model category の概念を構成する要素の一つとみなすこともできる。

Quillen が定義した位相空間の圏のモデル構造では, 定義がかなり面倒な写像を cofibration として指定しなければならないことに注意する。(Hovey の本 [Hov99] 参照。)

より自然なモデル構造は, Strøm [Str72] や Hastings [Has74] が構成している。 Strøm の model structure では, cofibration を NDR pair を用いて定義する。

  • Strøm model structure の cofibration は, NDR pair (と同型なもの)。
  • Strøm model structure の trivial cofibration は, DR pair (と同型なもの)。

Model category の概念の普及により, cofibration や cofibrant object の概念が, 位相空間の圏以外でも考えられるようになっている。 典型的な例を知っているとよい。

  • 単体的集合の圏の (Quillen model structure での) cofibration
  • chain complexの圏の (projective model structure での) cofibration

また, weak equivalence と cofibration しか持たないような構造も色々考えられている。

  • Waldhausen の category with cofibrations
  • K.S. Brown の category of (co)fibrant objects
  • Baues の (co)fibration category

他にも色々あるが, それらについてはこのページにまとめた。

References

[Has74]

Harold M. Hastings. “Fibrations of compactly generated spaces”. In: Michigan Math. J. 21 (1974), 243–251 (1975). url: http://projecteuclid.org/euclid.mmj/1029001312.

[Hov99]

Mark Hovey. Model categories. Vol. 63. Mathematical Surveys and Monographs. Providence, RI: American Mathematical Society, 1999, p. xii 209. isbn: 0-8218-1359-5.

[Lil73]

Joachim Lillig. “A union theorem for cofibrations”. In: Arch. Math. (Basel) 24 (1973), pp. 410–415.

[Str66]

Arne Strøm. “Note on cofibrations”. In: Math. Scand. 19 (1966), pp. 11–14. url: https://doi.org/10.7146/math.scand.a-10791.

[Str68]

Arne Strøm. “Note on cofibrations. II”. In: Math. Scand. 22 (1968), 130–142 (1969). url: https://doi.org/10.7146/math.scand.a-10877.

[Str72]

Arne Strøm. “The homotopy category is a homotopy category”. In: Arch. Math. (Basel) 23 (1972), pp. 435–441. url: https://doi.org/10.1007/BF01304912.