分類空間のホモトピー論

群の分類空間小圏の分類空間は, 代数的あるいは組み合わせ論的対象から, ホモトピー論の研究対象を作る操作として重要である。

最初に構成されたのは, 位相群 (Lie群) の分類空間であるが, その構成は, 群の作用をホモトピー論的に考えるときにも, 必要になる。

  • 群 \(G\) が作用する空間 \(X\) に対し homotopy orbit space \(X_{hG}\) と homotopy fixed point \(X^{hG}\)

Homotopy orbit space は Borel construction とも呼ばれる。 homotopy colimit の重要な例である。

もちろん, 群の分類空間については, 元々の principal bundle を分類する空間としての役割を忘れてはいけないが: \[ P_G(X) \cong [X,BG] \] このことから, \(X\) 上の principal \(G\)-bundle を分類するためには, \(G\) の分類空間 \(BG\) のホモトピー型のみ必要であることが分かる。

逆に, \(BG\) を定義域に持つ写像のホモトピー類 \([BG,X]\) を調べる, という問題も考えられる。これについては, Sullivan予想という予想があったが, H. Miller により解決されている。

これ以外にも, 離散群の分類空間の特異コホモロジーが, 代数的に定義された群のコホモロジーと同型であることからも, 分類空間のホモトピー型を調べることが, 重要であることが分かる。

分類空間のホモトピー論的な性質については, 例えば, Quillen の論文 [Qui78] も見るとよい。また分類空間や群の(コ)ホモロジーについて, Dwyer と Henn の [DH01] は非常に良い入門書である。

群の分類空間を詳しく調べることにより, 群論的性質を得ることもできる。 位相群の中の互いに可換である元の組から simplicial space の列を作り, それにより分類空間に filtration を定義しているのは, Adem と Cohen と Torres-Giese [ACT12] である。有限群の場合には, 群論的な性質と深く関係している filtration のようである。 Grodal [Gro] のように, 群の分類空間のホモトピー論的性質を調べることを, homotopical group theory と呼んでいる人もいる。

ホモトピー論的には, 位相空間 \(X\) に対し \[ X \simeq \Omega BX \] となる空間 \(BX\) を \(X\) の delooping という。 もちろん, 一意的には決まらない。何通りの delooping があるか, というのも面白い問題である。

  • \(S^3\) の delooping は非可算個ある。[Rec71]

コンパクトLie群の場合, この delooping の問題に \(K\)理論Adams作用素が 「使える」ということは, Notbohm の結果 [Not93] から分かる。 実際に \(S^3\) の場合に計算した例として [Yau05] がある。

群の(コ)ホモロジーとの関連では以下のことがある。

  • \(G\) が discrete group のとき, \(G\)-module \(M\) に対し \begin{align*} H_*(BG;M) & = \Tor ^{\Z [G]}_*(\Z ,M) \\ H^*(BG;M) & = \Ext _{\Z [G]}^*(\Z ,M) \end{align*}
  • \(G\) が有限群で, \(R\) が Noetherian commutative ring ならば, \(H^*(BG;R)\) は有限生成 \(R\)-algebra である。
  • Quillen の \(F\)-isomorphism 定理

実は, 離散群の分類空間のホモロジー, つまり群の代数的なホモロジーが分かると全ての位相空間のホモロジーが分かる。 それが Kan-Thurston の定理である。

分類空間のコホモロジーを見ると, 分類空間の安定ホモトピー型が予想できる。 例えば, どのように分解するとか。そのような有限群の stable splitting については, Priddy の lecture note [Pri07] がある。

群のコホモロジーをホモロジー代数的に扱うときは, \(\Z [G]\) 上の projective resolution を用いるが, それにより \(G\) の Euler標数を定義しようと考えたのは, 誰が最初なのだろうか。K.S. Brown の [Bro74; Bro75] に Serre [Ser71] の定義の一般化がある。

離散群の Euler標数は, 有理数に値を持つものであり, 直接分類空間から定義されたものではないので, 分類空間のホモトピー不変量とみなすにはちょっと無理があるが。 現在では, \(L^2\)不変量と考えることもでき, そちらなら \(EG\) を用いて考えることができる。

有限群 \(G\) や compact Lie群分類空間 \(BG\), 特に素数 \(p\) による completion を取ったもの \(BG_p^{\wedge }\), を調べる際には fusion system という概念が有用であることが分ってきた。

Jakobsen と Møller [JM12] は, その Leinster の意味の Euler標数を考えている。 その値は元の群についてのどういう情報を持っているのだろうか。

Fusion system 以外では, Benson [Ben09] による \(\Omega BG_p^{\wedge }\) のホモロジーの表現論的データによる記述も興味深い。

局所化に関連したテクニックとして, cellularization や nullification がある。例えば, Flores らは, [FS; Flo07; FF] で, \(B\Z /p\Z \) に関する cellularization で有限群の分類空間を調べている。

References

[ACT12]

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[Ben09]

Dave Benson. “An algebraic model for chains on \(\Omega BG^{\wedge }_{p}\)”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 361.4 (2009), pp. 2225–2242. url: http://dx.doi.org/10.1090/S0002-9947-08-04728-4.

[Bro74]

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[Bro75]

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[DH01]

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[Flo07]

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[FS]

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[Gro]

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[Not93]

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[Pri07]

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[Qui78]

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[Rec71]

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[Ser71]

Jean-Pierre Serre. “Cohomologie des groupes discrets”. In: Prospects in mathematics (Proc. Sympos., Princeton Univ., Princeton, N.J., 1970). Princeton, N.J.: Princeton Univ. Press, 1971, 77–169. Ann. of Math. Studies, No. 70.

[Yau05]

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