小圏は, 様々な代数的構造の一般化とみなすことができる。 モノイドは object が1つの小圏であるし, 群は object 1 つの
groupoidであり, groupoid は全ての morphism が invertible である小圏である。
また, 可換環 \(k\) 上の加群の圏 \(\lMod {k}\) で enrich された小圏, すなわち \(k\)-linear な小圏は, \(k\) 上の algebra の
many-objectification である。
別の方向では, poset も小圏の特別な場合とみなすことができる。 代数的構造というより, 組み合せ論的構造であるが。
このように考えると, 各種代数的構造の 表現論を, 小圏に一般化したくなる。では, 小圏 \(C\) の \(k\) 上の表現とは何か, であるが,
それは単に関手 \(C\to \lMod {k}\) (あるいは \(C^{\op }\to \lMod {k}\)) のことである。 \(A\) が \(k\) 上の algebra のとき, \(A\) を object 1つの \(k\)-linear category
と考えたとき, \(k\)-linear functor \(A\to \lMod {k}\) を与えることは, 左\(A\)加群を与えることと同値であり, \(k\)-linear functor \(A^{\op }\to \lMod {k}\) を与えることは,
右\(A\)加群を与えることと同値だからである。
小圏と同じように頂点と矢印で表されるものとして quiver があるが, quiver の表現は様々な分野で登場する。 頂点に加群,
矢印に準同型を対応させるもの, として定義されていることが多いが, 別の言い方をすると, その quiver から生成された free category
(path category) の表現である。
代数的トポロジーで使われる小圏の中で, 最も重要なものの一つは, simplicial object の定義に使われる \(\Delta \) であるが, その \(\lMod {k}\)
での表現は, (co)simplicial \(k\)-module に他ならない。
更に, \(\Delta \) の様々な変種の表現として, (co)simplcial object の変種が, 色々定義される。 そのようなものは,
ホモトピー論的な視点から調べられることも多いが, 表現論的に調べられているものとして, Church, Ellenberg, Farb [CEF15]
により導入された FI-object やその一般化がある。
そのような (co-)FI object を “combinatorial category” の表現として統一して扱うことを, Sam と
Snowden が [SS17] で提案している。そこでは, Gröbner category や quasi-Gröbner category
などの概念が導入され, Gröbner 基底の理論の一般化が展開されている。
- Gröbner category
- quasi-Gröbner category
他にも, persistent homology や presheaf も小圏の表現である。
高次の圏の理論の発展により, \(2\)-group や \(2\)-category のような, 高次の圏論的構造の表現も考えられるようになっている。
References
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[CEF15]
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Thomas Church, Jordan S. Ellenberg, and Benson Farb. “FI-modules
and stability for representations of symmetric groups”. In: Duke
Math. J. 164.9 (2015), pp. 1833–1910. arXiv: 1204.4533. url:
http://dx.doi.org/10.1215/00127094-3120274.
-
[SS17]
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Steven V. Sam and Andrew Snowden. “Gröbner methods
for representations of combinatorial categories”. In: J. Amer.
Math. Soc. 30.1 (2017), pp. 159–203. arXiv: 1409.1670. url:
https://doi.org/10.1090/jams/859.
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