写像空間のトポロジー

代数的トポロジーでは, 連続写像の成す空間 \(\mathrm {Map}(X,Y)\) や その基点付き版 \(\mathrm {Map}_*(X,Y)\) をよく使う。 例えばループ空間など。

一つの理由は, \(\mathrm {Map}(X,-)\) や \(\mathrm {Map}_*(X,-)\) が, \((-)\times X\) や \((-)\wedge X\) という基本的な関手の right adjoint だからである。 ホモトピー代数の視点からは, 空間に対しできるだけ多くの操作ができることが望ましく, 写像空間による構成はその基本となる。

写像空間のホモトピー論についてまとめたものとして, S.B. Smith の [Smi] がある。

写像空間のような無限次元の空間を調べる際には, よくわかっている有限次元の空間で近似しないと扱うのが難しい。 そのような写像空間のモデルは色々考案されている。 特に多重ループ空間を調べる際には有効である。

写像空間 \(\mathrm {Map}(X,F)\) を自明な bundle の cross section の成す空間とみなすことは, 様々な場面で有効である。例えば, twisted cohomology の構成など。

写像空間や section の空間のホモトピー群を計算する spectral sequence もある。

  • Federer spectral sequence [Fed56]
  • Schultz の section の空間のホモトピー群を計算するための spectral sequence [Sch73]

可微分多様体の間の写像を考えるときには, 当然可微分なものを考える必要がある。 可微分写像の成す空間としては, 埋め込みの成す空間や diffeomorphism の成す位相群などがよく調べられている。

代数多様体複素多様体の間の写像としては, rational map や holomorphic map の成す空間を考えるのが自然である。 それがどれぐらい連続写像で近似できるかということについては, 有名な Segal の仕事 [Seg79] がある。

  • spaces of rational maps and holomorphic maps

その拡張として, Jeremy Miller [Mil13; Mil15] は \(J\)-holomorphic curve の 成す空間を考えている。それによると, Segal の結果を \(J\)-holomorphic curve に拡張することについては, 既に Cohen と Jones と Segal [CJS00] によって研究が始まっていたようである。 Miller のアプローチは, topological chiral homology を使っている点で興味深い。

多様体上のループ空間に関する話題としては, string topology もある。

連続とは限らない写像のなす空間も考えられる。 このような空間を考えるときには, 当然関数解析的な手法で位相を入れないといけない。 写像空間は, 多様体になるにしても, 通常無限次元であるが, そのような場合にはやはり関数解析的構造を考えないといけない。 Saldanha [Sala; Salb] は, \(S^2\) 上の locally convex smooth curve の成す Hilbert manifold の ホモロジーホモトピー群を調べている。

References

[CJS00]

Ralph L. Cohen, John D. S. Jones, and Graeme B. Segal. “Stability for holomorphic spheres and Morse theory”. In: Geometry and topology: Aarhus (1998). Vol. 258. Contemp. Math. Amer. Math. Soc., Providence, RI, 2000, pp. 87–106. url: http://dx.doi.org/10.1090/conm/258/04057.

[Fed56]

Herbert Federer. “A study of function spaces by spectral sequences”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 82 (1956), pp. 340–361. url: https://doi.org/10.2307/1993052.

[Mil13]

Jeremy Miller. “Homological stability properties of spaces of rational \(J\)-holomorphic curves in \(\mathbb {P}^2\)”. In: Algebr. Geom. Topol. 13.1 (2013), pp. 453–478. arXiv: 1110.1665. url: https://doi.org/10.2140/agt.2013.13.453.

[Mil15]

Jeremy Miller. “The topology of the space of \(J\)-holomorphic maps to \(\CP ^2\)”. In: Geom. Topol. 19.4 (2015), pp. 1829–1894. arXiv: 1210.7377. url: https://doi.org/10.2140/gt.2015.19.1829.

[Sala]

Nicolau C. Saldanha. The homotopy and cohomology of spaces of locally convex curves in the sphere – I. arXiv: 0905.2111.

[Salb]

Nicolau C. Saldanha. The homotopy and cohomology of spaces of locally convex curves in the sphere – II. arXiv: 0905.2116.

[Sch73]

Reinhard Schultz. “Homotopy decompositions of equivariant function spaces. I”. In: Math. Z. 131 (1973), pp. 49–75.

[Seg79]

Graeme Segal. “The topology of spaces of rational functions”. In: Acta Math. 143.1-2 (1979), pp. 39–72. url: http://dx.doi.org/10.1007/BF02392088.

[Smi]

Samuel Bruce Smith. The homotopy theory of function spaces: a survey. arXiv: 1009.0804.