コンパクト開位相と写像空間の基本

代数的トポロジーでは, 写像空間をよく使う。 よって, コンパクト開位相は必須である。どうやら Fox [Fox45] によって導入されたらしい。

  • コンパクト開位相の定義
  • 連続写像 \[ f : X\times Y \longrightarrow Z \] に対し, その adjoint \[ \ad (f) : X \longrightarrow \mathrm{Map}(Y,Z) \] も連続である。
  • \(X\) と \(Y\) が Hausdorff ならば adjoint を取ることによる対応 \[ \ad : \mathrm{Map}(X\times Y, Z) \longrightarrow \mathrm{Map}(X,\mathrm{Map}(Y,Z)) \] は連続である。更に \(Y\) が, 局所コンパクトならば, \(\ad \) は同相写像になる。
  • \(Y\) が局所コンパクトHausdorffならば, 写像の合成で与えられる \[ \mathrm{Map}(Y,Z)\times \mathrm{Map}(X,Y) \longrightarrow \mathrm{Map}(X,Z) \] は連続である。
  • 位相空間 \(X\), \(Y\) に対し \[ \ev : \mathrm{Map}(X,Y)\times X \longrightarrow Y \] を \(\ev (f,x) = f(x)\) で与えられる写像(evaluation map)とする。 \(X\) が局所コンパクト Hausdorff のとき, コンパクト開位相は, \(\ev \) を連続にする位相の内, 最弱 (開集合が最も少ない) のものである。
  • \(M_{m,n}(\R )\) を \(\R ^{mn}\) と同一視し, Euclid距離により定義した位相と \(\mathrm{Map}(\R ^n,\R ^m)\) のコンパクト開位相の相対位相は一致する。

関数空間 (写像空間) の位相については, 有名な Kelley の教科書 [Kel75] が詳しい。この本は, コンパクト生成位相についての解説としても, お勧めである。ファイバー束の本 [玉木大20; Tam21] にも解説を書いた。

そこでも書いたが, 位相空間\( X\) の自分自身への 同相写像全体の集合 \(\mathrm{Homeo}(X)\) を位相群にするためには, コンパクト開位相では不十分である。逆写像を取る対応 \[ \nu : \mathrm{Homeo}(X) \longrightarrow \mathrm{Homeo}(X) \] を連続にするためには, もう少し開集合を増やして“symmetrized compact-open topology”にする必要がある。\(X\) がコンパクトならコンパクト開位相でもよいが, Atiyah と Segal の \(K\)-theory の twisting [AS04] のように \(X\) として無限次元の空間を考えなければならない場合も多い。 \(\mathrm{Homeo}(X)\) の位相については, この Atiyah と Segal の論文にも書いてある。

もちろん, \(\mathrm{Homeo}(X)\) にコンパクト開位相を入れたときに, \(\mathrm{Homeo}(X)\) が位相群になるための \(X\) の条件を考えることも行なわれている。Arens の [Are46] や Dijkstra の [Dij05] などがある。

写像空間が, CW複体のホモトピー型を持っていてくれると扱い易いが, それについては Milnor の結果 [Mil59] が有名である。 P.J. Kahn の [Kah84]もある。最近では [Smr] がある。

References

[Are46]

Richard Arens. “Topologies for homeomorphism groups”. In: Amer. J. Math. 68 (1946), pp. 593–610. url: https://doi.org/10.2307/2371787.

[AS04]

Michael Atiyah and Graeme Segal. “Twisted \(K\)-theory”. In: Ukr. Mat. Visn. 1.3 (2004), pp. 287–330. arXiv: math/0407054.

[Dij05]

Jan J. Dijkstra. “On homeomorphism groups and the compact-open topology”. In: Amer. Math. Monthly 112.10 (2005), pp. 910–912. eprint: \url{http://dx.doi.org/10.2307/30037630}.

[Fox45]

Ralph H. Fox. “On topologies for function spaces”. In: Bull. Amer. Math. Soc. 51 (1945), pp. 429–432. url: https://doi.org/10.1090/S0002-9904-1945-08370-0.

[Kah84]

Peter J. Kahn. “Some function spaces of CW type”. In: Proc. Amer. Math. Soc. 90.4 (1984), pp. 599–607. url: http://dx.doi.org/10.2307/2045037.

[Kel75]

John L. Kelley. General topology. Vol. 27. Graduate Texts in Mathematics. New York: Springer-Verlag, 1975, p. xiv 298.

[Mil59]

John Milnor. “On spaces having the homotopy type of a \(\mathrm{CW}\)-complex”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 90 (1959), pp. 272–280. url: https://doi.org/10.2307/1993204.

[Smr]

Jaka Smrekar. CW type of inverse limits and function spaces. arXiv: 0708.2838.

[Tam21]

Dai Tamaki. Fiber Bundles and Homotopy. WORLD SCIENTIFIC, 2021. url: https://www.worldscientific.com/doi/abs/10.1142/12308.

[玉木大20]

玉木大. ファイバー束とホモトピー. 森北出版, 2020, p. 320. isbn: 978-4-627-05461-5.