代数幾何学や 代数解析学など, 幾何学的対象を代数的に扱う際には層は必要不可欠な概念である。
代数的トポロジーでは, 層の代わりに fibration などの概念を導入し, 空間レベルで代数的な操作を行なえるよう にしてきたが,
代数的トポロジーでも層の概念の応用はある。 最も古いのは, 局所係数と局所係数の(コ)ホモロジーだろう。 より新しいものとしては, Mark
Johnson による多重ループ空間の topological category 上の presheaf としての記述などがある。 また Lurie の
[Lur09] の §7.1 や Shulman の [Shu08] にあるように, 位相空間 \(X\) 上の parametrized space を考えることと, \(X\)
上の層を考えることは密接に関係している。
Grothendieck と Verdier に従って, 層を扱う際には, derived category を考えるのが普通である。
最近では simplicial (pre)sheaf の model category も使われている。Jardine [Jar86; Jar87]
による発見は, simplicial sheaf の場合, model category として考えると, sheaf の条件は simplicial presheaf
の category 上の model structure として表すことができるということである。 これは, motivic homotopy
theory で重要な役割を果している。
群の作用を持つ空間上では, equivariant sheaf を考え, その derived category を考えたくなる。
Bernstein と Lunts [BL94] によると, 離散群でない場合は, 単純に equivariant sheaf の成す Abelian
category の derived category を取るのではうまくいかないようである。彼等はその代わりとなる triangulated
category を構成している。
また, 層に関連した topos や gerbe や stack や torsor などの概念も徐々に一般的になってきた。
特に数理物理からの要請によるところが大きい。 また, elliptic cohomology の構成を, 高次のベクトル束を用いて行なうというアイデアもあるから,
高次の層もこれから一般的になっていくだろう。 Carchedi の [Car]にあるように, stack 上の stack なども考えられている。
これらの概念の入門としては, Moerdijk の [Moe] が分りやすい。
高次化としては, up to homotopy での層も使われるようになってきた。 Berwick-Evans, Boavida de Brito,
Pavlov [BBP] では, \(\infty \)-sheaf と呼ばれているが, homotopy sheaf とも呼ばれるようである。
- \(\infty \)-sheaf あるいは homotopy sheaf
層 \(\cF \) は, presheaf で \(U\) の covering \(\{U_{i}\}_{I}\) が与えられたとき, \(\cF (U)\) が図式 \[ \xymatrix { {\displaystyle \prod _i \cF (U_i)} \ar @<1ex>[r]^(.4){p} \ar @<-1ex>[r]_(.4){q} & {\displaystyle \prod _{i,j\in I} \cF (U_i\cap U_j),} } \] の equalizer になることで定義されるが, 3個以上の \(U_{i}\)
の共通部分を使って, この図式を無限に右に拡張することができる。その図式の homotopy limit と \(\cF (U)\) が weakly equivalent
になることで, 定義される。 当然, model category に値を持つ presheaf に対する条件である。
Constructible sheaf と exit-path category の表現の間の対応を考えるために, Lejay [Lej] は,
hypersheaf という概念を用いている。Lurie の [Lur] の Lemma A.3.9 に登場する条件に名前を付けたものであるが,
名前を付けたのは, 多分 Lejay だと思う。そして hyperconstructible hypersheaf などの概念も導入している。
- hypersheaf
- hyperconstructible hypersheaf
逆に, より具体的な方向としては, 組み合せ論で用いられる層がある。
作用素環の世界では, 従来 field of \(C^*\)-algebras などのような, bundle や sheaf に近いものが使われてきたが, ちゃんと
\(C^*\)-algebra の sheaf を扱った文献も出てきた。 Ara と Mathieu の [AM10] や Roe と Siegel の [RS13]
など。
- sheaf of \(C^*\)-algebras
層の双対概念として “cosheaf” を考えることもできる。 単に形式的に定義されるだけでなく, 最近では実際の問題に使われるようにもなってきた。
Flori と Fritz [FF16] は sheaf ではない presheaf を扱うために gleaf の概念を導入した。Presheaf に貼り合せ
(gluing) の情報を付加したものである。Sheaf と cosheaf を組み合せた bisheaf という概念もある。 Nanda と Patel の
[NP20] など。
References
-
[AM10]
-
Pere Ara and Martin Mathieu.
“Sheaves of \(C^{*}\)-algebras”. In: Math. Nachr. 283.1 (2010), pp. 21–39. url:
http://dx.doi.org/10.1002/mana.200910097.
-
[BBP]
-
Daniel Berwick-Evans, Pedro Boavida de Brito, and Dmitri Pavlov.
Classifying spaces of infinity-sheaves. arXiv: 1912.10544.
-
[BL94]
-
Joseph Bernstein and Valery Lunts. Equivariant sheaves and functors.
Vol. 1578. Lecture Notes in Mathematics. Berlin: Springer-Verlag,
1994, pp. iv+139. isbn: 3-540-58071-9.
-
[Car]
-
David Carchedi. Sheaf Theory for Étale Geometric Stacks. arXiv:
1011.6070.
-
[FF16]
-
Cecilia Flori and Tobias Fritz. “Compositories and gleaves”. In: Theory
Appl. Categ. 31 (2016), Paper No. 33, 928–988. arXiv: 1308.6548.
-
[Jar86]
-
J. F. Jardine. “Simplicial objects in a Grothendieck topos”. In:
Applications of algebraic \(K\)-theory to algebraic geometry and number
theory, Part I, II (Boulder, Colo., 1983). Vol. 55. Contemp.
Math. Amer. Math. Soc., Providence, RI, 1986, pp. 193–239. url:
https://doi.org/10.1090/conm/055.1/862637.
-
[Jar87]
-
J. F. Jardine. “Simplicial presheaves”. In: J. Pure Appl. Algebra 47.1
(1987), pp. 35–87. url:
http://dx.doi.org/10.1016/0022-4049(87)90100-9.
-
[Lej]
-
Damien Lejay. Constructible hypersheaves via exit paths. arXiv: 2102.
12325.
-
[Lur]
-
Jacob Lurie. Higher Algebra. url:
https://www.math.ias.edu/~lurie/papers/HA.pdf.
-
[Lur09]
-
Jacob Lurie. Higher topos theory. Vol. 170. Annals of Mathematics
Studies. Princeton University
Press, Princeton, NJ, 2009, pp. xviii+925. isbn: 978-0-691-14049-0.
url: http://dx.doi.org/10.1515/9781400830558.
-
[Moe]
-
Ieke Moerdijk. Introduction to the language of stacks and gerbes. arXiv:
math/0212266.
-
[NP20]
-
Vidit
Nanda and Amit Patel. “Canonical stratifications along bisheaves”. In:
Topological data analysis—the Abel Symposium 2018. Vol. 15. Abel
Symp. Springer, Cham, [2020] ©2020, pp. 391–403. arXiv: 1812.
05593. url: https://doi.org/10.1007/978-3-030-43408-3_15.
-
[RS13]
-
John Roe and Paul Siegel. “Sheaf theory and Paschke duality”. In:
J. K-Theory 12.2 (2013), pp. 213–234. arXiv: 1210 . 6420. url:
https://doi.org/10.1017/is013006016jkt233.
-
[Shu08]
-
Michael A. Shulman.
“Parametrized spaces model locally constant homotopy sheaves”. In:
Topology Appl. 155.5 (2008), pp. 412–432. arXiv: 0706.2874. url:
http://dx.doi.org/10.1016/j.topol.2007.11.001.
|