ホモロジーは計算可能である。より正確に言えば, ホモロジーは, 一般には, ホモトピー群より計算が楽である。 実際, ホモロジーを計算することにより,
様々な空間の重要な性質が得られる。
慣れてくると, 空間のホモロジーを計算することにより, その空間がどういう空間かということを「感じる」ことができるようになる。
そうなるためにも, なるべく多くの空間の(コ)ホモロジーを, 自分で計算してみるべきである。
多様体の中でも, Lie群は特に重要である。球面 (Stiefel多様体) や射影空間 (Grassmann多様体) などのように
Lie群を用いて等質空間として記述される多様体は多いし, また分類空間など関連した空間も多いからである。Lie群は,
かつて日本の代数的トポロジーの研究者の間では中心的な研究対象だった。 関西の研究者が中心となって, Lie群やそれに関連した空間,
等質空間や分類空間など, のコホモロジーを数多く決定した。 その結果の一部は戸田-三村の本 [戸三78; 戸三79; MT91] にまとめられている。
スペクトル系列の使い方を勉強したい人は, この本の計算を自分でやってみるとよい。
離散群 \(G\) については, \(G\) の (代数的に定義さ れた) コホモロジーは, 分類空間 \(BG\) の (位相空間としての) コホモロジーである。逆に
Kan-Thurston の定理 [KT76] により, 位相空間のコホモロジーは群のコホモロジーとみなすことができる。 そのため,
群のコホモロジーは, 代数の研究者はもちろん, トポロジーの研究者によっても活発に研究されてきた。
分類空間を用いて構成できる空間の中で, 最も重要なものの一つが Eilenberg-Mac Lane space である。
Eilenberg-Mac Lane空間 の(コ)ホモロジーの計算は, ループ空間の(コ)ホモロジーの計算例としても重要である。
References
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[KT76]
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D. M. Kan and W. P. Thurston. “Every connected space has the
homology of a \(K(\pi ,1)\)”. In: Topology 15.3 (1976), pp. 253–258.
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[MT91]
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Mamoru Mimura and Hirosi Toda. Topology of Lie groups. I, II.
Vol. 91. Translations of Mathematical Monographs. Translated from
the 1978 Japanese edition by the authors. Providence, RI: American
Mathematical Society, 1991, pp. iv+451. isbn: 0-8218-4541-1.
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[戸三78]
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戸田宏 and 三村護. リー群の位相(上). Vol. 14-A. 紀伊國屋数学叢書. 東京: 紀伊國屋書店, 1978.
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[戸三79]
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戸田宏 and 三村護. リー群の位相(下). Vol. 14-B. 紀伊國屋数学叢書. 東京: 紀伊國屋書店, 1979.
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