解析学との関連

解析学と代数的トポロジーとの関連で, まず知っておくべきなのが \(C^*\) 環のことだろう。\(K\) 理論の関連で重要である。また von Neumann algebra は, \(L^2\) 不変量の定義などに使われるので, 作用素環全般について勉強しておいて損はない。 代数解析は (解析学の一分野と言えないかもしれないが) ホモロジー代数を使うという点で共通点が多い。

ODE との関連では, ordinary differential operator の critical set の成す空間のトポロジーについての研究などがある。Saldanha と Tomei による survey [ST] がある。

トポロジーではないが, PDE については synthetic differential geometry の視点から理論を構築することを提案している人達 [KS] もいる。

逆に, 確率論は代数的トポロジーとかなり遠い分野と言えるだろう。Terrence Taoが blog に書いているように, structured object を扱うのに適しているのが代数や幾何であり, その対極にある pseudorandom object を扱うのに適しているのが解析や確率論である。

最近では, random graph や random simplicial complex の研究などを通じて, 確率論と代数的トポロジーの境界領域が形成されつつある。

また, Park ら [DPT15a; DPT15b] が提案している homotopy probability theory もある。

基礎となる Lebesgue 積分自体も, 代数的トポロジーの考え方からは遠いもののように思っていたが, Leinster により圏論的な特徴付けが発見された。 このような視点から解析の基礎が見直されると理解し易くなる。

もちろん, structured object と pseudorandom object の両方の性質を持ったもの (Tao は hybrid set と呼んでいる) を調べることも行なわれてきている。そのためには, 代数, 幾何, 解析等あらゆる道具を駆使しなければならないが, 興味深い対象であることには違いない。

球面のホモトピー群は, hybrid object なのだろうか。Tsui と Wang [TW04] や Guth [Gut; Gut13] のように解析学の道具を使って, 球面のホモトピー群を調べるという試みもあり, 興味深い。特に, Guth がホモトピー群に定義した filtration には, 何かホモトピー論的に重要な意味があるのだろうか。

代数的トポロジーとの関係ではないが, Robins の本 [Rob] では, Fourier transform を使って lattice polytope を調べる方法が分かり易く解説されていて, 面白く読める。

  • Fourier transform

References

[DPT15a]

Gabriel C. Drummond-Cole, Jae-Suk Park, and John Terilla. “Homotopy probability theory I”. In: J. Homotopy Relat. Struct. 10.3 (2015), pp. 425–435. arXiv: 1302 . 3684. url: https://doi.org/10.1007/s40062-013-0067-y.

[DPT15b]

Gabriel C. Drummond-Cole, Jae-Suk Park, and John Terilla. “Homotopy probability theory II”. In: J. Homotopy Relat. Struct. 10.3 (2015), pp. 623–635. arXiv: 1302 . 5325. url: https://doi.org/10.1007/s40062-014-0078-3.

[Gut]

Larry Guth. Homotopically non-trivial maps with small \(k\)-dilation. arXiv: 0709.1241.

[Gut13]

Larry Guth. “Contraction of areas vs. topology of mappings”. In: Geom. Funct. Anal. 23.6 (2013), pp. 1804–1902. arXiv: 1211.1057. url: https://doi.org/10.1007/s00039-013-0246-3.

[KS]

Igor Khavkine and Urs Schreiber. Synthetic geometry of differential equations: I. Jets and comonad structure. arXiv: 1701.06238.

[Rob]

Sinai Robins. A friendly introduction to Fourier analysis on polytopes. arXiv: 2104.06407.

[ST]

Nicolau C. Saldanha and Carlos Tomei. The topology of critical sets of some ordinary differential operators. arXiv: math/0501071.

[TW04]

Mao-Pei Tsui and Mu-Tao Wang. “Mean curvature flows and isotopy of maps between spheres”. In: Comm. Pure Appl. Math. 57.8 (2004), pp. 1110–1126. arXiv: math/0302242. url: http://dx.doi.org/10.1002/cpa.20022.