代数幾何とトポロジーの比較(類似)

\(K\) 理論に代表されるように, 代数幾何学からトポロジーに輸入された道具もあれば, 特性類のようにその逆の場合もある。

代数幾何学も代数的トポロジーも, いづれも幾何学的対象を抽象化して代数的に扱おうという立場は同じであるから, 共通点があっても不思議ではない。 実際, Hodge-to-de Rham spectral sequence の非可換版を調べた Kaledin の [Kal08] は, 安定ホモトピー論における構成との類似を指摘している。 また, 代数幾何学と代数的トポロジーの研究者の間のコミュニケーション不足も指摘している。

代数的トポロジーにおける構成の類似としては, Kapranov と Vasserot による free loop space の類似の構成 [KV04; KV07; KV08; KV] もある。これは, chiral de Rham complex と free loop space との関係を正確に述べるために導入された。

  • formal loop space

ただし, vector bundle のようにその違いに気をつけなければならない道具もある。 コホモロジーや基本群などに Hodge 構造と呼ばれる構造が入ることも違いの一つである。

  • 代数多様体上の vector bundle の Harder-Narasimhan filtration
  • mixed Hodge structure [Del71]

[CJ06] では, 代数多様体上の vector bundle の subvariety と各 fiber の共通部分が一定次元の vector space であっても subbundle にならない例が述べられている。

コホモロジーも代数的トポロジーのように様々なものがある。

ホモトピー論的な道具で, 古くから代数幾何学でも用いられているのが, 基本群である。もちろん, 被覆空間との関連があるからである。 これは Galois 理論のと関連で勉強するべきだろう。 実あるいは複素数体上では, トポロジーでの基本群の定義を用いることができる。一般には, 例えば, étale fundamental group を考えることができる。 Étale fundamental group は, Galois category の理論を用いて profinite group として定義するのが普通であるが, より一般に étale homotopy type という pro-simplicial set を考えることができる。

Totaro の仕事 [Tot99] により, 群の分類空間が代数幾何の範疇で扱えるようになった。 様々な代数群の分類空間の Chow ring を計算しようという試みがある。Guillot が \(G_2\) と \(\mathrm {Spin}_7\) の場合の計算を [Gui07] でやっているが, それを見るとどのような群に対して誰が計算したかが分かる。

  • Chow ring
  • Totaro による代数群の分類空間の代数多様体による近似

Chow ring 以外にも, トポロジーにおけるコホモロジー環の役目をするものが発見されている。 代表的なのは Voevodsky の motivic cohomology だろう。

この Voevodsky の仕事に代表される, 代数幾何学とホモトピー論との類似については, 別のページにまとめた。

Voevdosky の枠組みを使えば, かなり自由に安定ホモトピー論が展開でき, 例えばコホモロジー作用素なども定義できる。 ただ, Chow ring などのように古典的な道具については, やはり初等的な方法で扱いたいという欲求がある。Chow ring 上の Steenrod 作用素については, Brosnan の [Bro03] や Boivert の [Boi] がある。

References

[Boi]

Alex Boisvert. A New Definition of the Steenrod Operations in Algebraic Geometry. arXiv: 0805.1414.

[Bro03]

Patrick Brosnan. “Steenrod operations in Chow theory”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 355.5 (2003), 1869–1903 (electronic). url: http://dx.doi.org/10.1090/S0002-9947-03-03224-0.

[CJ06]

William Crawley-Boevey and Bernt Tore Jensen. “A note on sub-bundles of vector bundles”. In: Glasg. Math. J. 48.3 (2006), pp. 459–462. arXiv: math/0505149. url: http://dx.doi.org/10.1017/S0017089506003259.

[Del71]

Pierre Deligne. “Théorie de Hodge. II”. In: Inst. Hautes Études Sci. Publ. Math. 40 (1971), pp. 5–57. url: http://www.numdam.org/item?id=PMIHES_1971__40__5_0.

[Gui07]

Pierre Guillot. “The Chow rings of \(G_2\) and Spin(7)”. In: J. Reine Angew. Math. 604 (2007), pp. 137–158. arXiv: math/0508122. url: https://doi.org/10.1515/CRELLE.2007.021.

[Kal08]

D. Kaledin. “Non-commutative Hodge-to-de Rham degeneration via the method of Deligne-Illusie”. In: Pure Appl. Math. Q. 4.3, Special Issue: In honor of Fedor Bogomolov. Part 2 (2008), pp. 785–875. arXiv: math/0611623. url: http://dx.doi.org/10.4310/PAMQ.2008.v4.n3.a8.

[KV]

M. Kapranov and E. Vasserot. Formal loops IV: Chiral differential operators. arXiv: math/0612371.

[KV04]

Mikhail Kapranov and Eric Vasserot. “Vertex algebras and the formal loop space”. In: Publ. Math. Inst. Hautes Études Sci. 100 (2004), pp. 209–269. arXiv: math / 0107143. url: http://dx.doi.org/10.1007/s10240-004-0023-9.

[KV07]

Mikhail Kapranov and Éric Vasserot. “Formal loops. II. A local Riemann-Roch theorem for determinantal gerbes”. In: Ann. Sci. École Norm. Sup. (4) 40.1 (2007), pp. 113–133. arXiv: math/0509646. url: http://dx.doi.org/10.1016/j.ansens.2006.12.003.

[KV08]

M. Kapranov and E. Vasserot. “Formal loops. III. Additive functions and the Radon transform”. In: Adv. Math. 219.6 (2008), pp. 1852–1871. arXiv: math/0510476. url: http://dx.doi.org/10.1016/j.aim.2008.07.007.

[Tot99]

Burt Totaro. “The Chow ring of a classifying space”. In: Algebraic \(K\)-theory (Seattle, WA, 1997). Vol. 67. Proc. Sympos. Pure Math. Providence, RI: Amer. Math. Soc., 1999, pp. 249–281.