\(3\)次元の Euclid空間内の正 多面体の分類は, 良く知られている。 \(5\)次元以上は単純であり, \(4\)次元が最も複雑である, という点は
多様体のトポロジーを思い起させる。
正多面体の中で基本的なのは, 次の\(3\)種類である:
- 正単体 (simplex)
- 立方体 (cube)
- 立方体の双対 (crosspolytope)
これらは, 全ての次元に存在するという意味で, 基本的である。 立方体については, Zong の解説 [Zon05] がある。
\(3\)次元と\(4\)次元は, それら以外の多面体があるという点で, 例外的な次元なのである。
- 正多面体の定義
- Schlöfli の記号
- \(3\)次元の正多面体は, 正\(4\)面体, 立方体, 正\(8\)面体, 正\(12\)面体, 正\(20\)面体の\(5\)種類
- \(4\)次元の正多面体は, 正\(5\)胞体 (\(4\)単体), 正\(8\)胞体 (\(4\)次元立方体), 正\(16\)胞体 (正\(8\)面体の\(4\)次元版), 正\(24\)胞体, 正\(120\)胞体, 正\(600\)胞体の\(6\)種類
- \(5\)次元以上の正多面体は, 単体, 立方体, 立方体の双対の \(3\)種類の高次元版のみ
正多面体については, Coxeter の本 [Cox73] が最も有名だろう。日本語では, 一松の本 [一松信02; 一松信83]
がある。
Stillwell の AMS Notices の エッセイ [Sti01] では, \(4\)次元正多面体の中の正\(120\)胞体が 「数学で最も美しいもの」として取り上げられている。
\(3\) 次元の正多面体の中で最も複雑なものは正\(20\)面体であるが, 正\(20\)面体と \(5\)次方程式との関係も, 「美しいもの」と言うべきだろう。これについては, まず
Bartlett による Notices of AMS の記事 [Bar24] とそこに挙げてある文献をみるとよい, と思う。
正多面体の条件を少し弱めた半正多面体 (semiregular polytope) も正多面体の本で扱われていることが多い。
正多面体から半正多面体を作る方法として, Wythoff の構成という方法がある。
正多面体と言えば, その変換群である。上記の本で, それぞれの正多面体の変換群が何か調べておくとよい。\(3\)次元の正多面体の場合は, [平井武01]
が分かり易くてよいだろう。 Conway と Smith の本 [CS03]では, 四元数や 八元数の lattice point
と関連づけて解説されている。
逆に, 与えられた有限群を変換群として持つ多面体が存在するか, というのは興味深い問題である。 これらに関するデータをwebで公開している研究者もいる:
多面体の face poset の変換群 (自己同型群) のみに着目した正多面体の一般化として, abstract polytope に対し
regular や semiregular の概念が定義されている。
多面体を組合せたものとして, polyhedral complex があるが, グラフを元にした polyhedral complex
の定義を考えたものとして, Grünbaum の (regular) polygonal complex [Grü77] がある。
- regular polygonal complex
最近 Pellicer と Schulte [PS10; PS13] により 調べられている。彼等による survey [PS14]
もある。
References
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[Bar24]
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Bruce Bartlett. “The quintic, the icosahedron, and elliptic curves”. In:
Notices Amer. Math. Soc. 71.4 (2024), pp. 444–453. url: https://www.ams.org/journals/notices/202404/rnoti-p444.pdf.
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[Cox73]
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H. S. M. Coxeter. Regular polytopes. Third. New York: Dover
Publications Inc., 1973, pp. xiv+321.
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[CS03]
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John H. Conway and Derek A. Smith. On quaternions and octonions:
their geometry, arithmetic, and symmetry. Natick, MA: A K Peters
Ltd., 2003, pp. xii+159. isbn: 1-56881-134-9.
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[Grü77]
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Branko Grünbaum.
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pp. 1–20. url: https://doi.org/10.1007/BF01836414.
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[PS10]
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Daniel Pellicer and
Egon Schulte. “Regular polygonal complexes in space, I”. In: Trans.
Amer. Math. Soc. 362.12 (2010), pp. 6679–6714. arXiv: 0906.1178.
url: http://dx.doi.org/10.1090/S0002-9947-2010-05128-1.
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[PS13]
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Daniel Pellicer and Egon Schulte. “Regular polygonal complexes in
space, II”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 365.4 (2013), pp. 2031–2061.
arXiv: 1210.2061. url:
https://doi.org/10.1090/S0002-9947-2012-05684-4.
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[PS14]
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Daniel Pellicer and Egon Schulte. “Polygonal complexes and graphs for
crystallographic groups”. In: Rigidity and symmetry. Vol. 70. Fields
Inst.
Commun. Springer, New York, 2014, pp. 325–344. arXiv: 1310.4905.
url: https://doi.org/10.1007/978-1-4939-0781-6_16.
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[Sti01]
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John Stillwell. “The story of the 120-cell”. In: Notices Amer. Math.
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[Zon05]
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Chuanming Zong. “What is known about unit cubes”. In: Bull.
Amer. Math. Soc. (N.S.) 42.2 (2005), 181–211 (electronic). url:
http://dx.doi.org/10.1090/S0273-0979-05-01050-5.
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[一松信02]
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一松信. 正多面体を解く. TOKAI LIBRARY. 東京: 東海大学出版会, 2002, p. 170. isbn:
4486015878.
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[一松信83]
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一松信. 高次元の正多面体. 数セミ・ブックス. 東京: 日本評論社, 1983, p. 180. isbn: 4535602077.
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[平井武01]
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平井武. 線形代数と群の表現I,II. 東京: 朝倉書店, 2001, p. v 484.
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