積が部分的にしか定義されていない代数的構造の many-objectification として, morphism の合成が部分的にしか定義されていない
small category の一般化がある。 条件が少しづつ異なるものを様々な人が独立に定義しているし, 同じものを別の名前で定義したり,
別のものを同じ名前で定義したりしているのでややこしい。
私が最初に気がついたのは, Bessis [Bes] が germ として定義しているものである。
より古くは, Ehresmann による neocategory がある。Bastiani と Ehresmann [BE72] は
Ehresmann の本 [Ehr68] を参照している。
Neocategory では, 全ての object が identity morphism を持つことが仮定されているが,
合成に関する結合法則は仮定されていない。 Bessis の germ では, 結合法則が仮定されているが。
Bessis の germ は, neocategory で morphism の合成の結合法則が成り立つものであるが, 同じように
neocategory で morphism の結合法則を仮定したものを, Mateus, Sernadas, Sernadas [MSS99] が
precategory という言葉で定義している。 同様のものを R. Milner [Mil06] も precategory と呼んで, 定義している。
Mateus らの論文を参照していないので, 恐らく Milner が独立して考えたのだろう。 Andersen と Kashaev [AK14]
も同じようなものを categroid という名前で定義しているが, Milner や Anderson と Kashaev の「定義」では, 3つの
morphism がどういう場合に合成可能かがはっきり書かれていない。
Identiy morphism に関する条件を弱め, 左側からの合成のみ identity であるものを Gould と Hollings
[GH10] は constellation として導入している。 Gould と Stokes の [GS17] に詳しく書かれている。それによると,
inverse semigroup と inductive groupoid の間の対応を拡張するために考えられたようである。
更に identity morphism の条件を弱め, identity morphism の存在も仮定しないものとして, Schröder と
Herrlich [SH00] の composition graph がある。
Identity morphism を仮定しないが, morphism の合成は source と target が等しい場合は常に定義され,
結合法則をみたすものとして, Barry Mitchell [Mit72] が semigroup の many-objectification として定義した
semicategory がある。
ただ, Schröder と Herrlich [SH00] も少し違う意味で semicategory という言葉を使っている。
これらを統一的に扱うために, Tringali [Tri] が plot という概念を定義している。
Trignali は version 2 で arXiv から取り下げているが, それは version 1 に間違いがあったからではないようである。
この MathOverflow の質問に対する回答とその comment によると, 出版しようとしてうまくいかなかったからのようである。
様々な人の試みを包括する概念なので, そのアイデアは十分価値があると思うが, 数学の人には, 単に新しい概念を考えただけでは評価しない人が多いように思う。
そのような人は, 何か具体的な問題を解決することに使えないと評価したくないのだと思うが, すぐに使えなくても新しいアイデア自体は評価すべきだと思う。
\(2\)-category の partial 版は, Cazassus の [Caz23] に登場する。
References
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