\(j\) 個の little \(n\)-cube の成す空間 \(\cC _{n}(j)\) は, 元々 Boardman と Vogt が [BV73] で導入したものであるが,
それを用いて多重ループ空間の理論を完成させたのは、 May [May72] である。
May は, その中で \(\mathcal{C}_n(j)\) を \(j\) に関し全て集めたものの持つ構造を抽象化して, operad という概念を定義した。Operad は,
現在ではトポロジーだけでなく, 代数や, 数理物理などでも重要な概念になっている。
\(\mathcal{C}_n(j)\) を \(j\) に関して集めたものは, operad の構造を忘れても重要な用途がある。多重ループ空間 の combinatorial
なモデルの構成である。それについては次のページにまとめた。
また, 位相空間としては, little cube の空間が Euclid空間の点の configuration space
とホモトピー同値であるということは重要である。 例えば, このことから, little square の空間 \(\mathcal{C}_2(j)\) が \(K(\pi ,1)\) であることが分かる。
- \(\mathcal{C}_n(j)\) は \(\mathrm{Conf}_{j}(\R ^n)\) と \(\Sigma _j\)-equivariant にホモトピー同値。
- \(\mathcal{C}_2(j)\) は, 基本群が pure braid group で\(2\)次元以上のホモピー群が消えている。
よって, \(\mathcal{C}_2(j)\) の universal cover は, braid群が自由に作用する可縮な空間となる。Fiedorowicz は, この性質が,
\(E_2\)-operad を特徴付けるものであることを示した。
- \(\mathcal{C}_2(j)\) の universal cover達には \(\mathcal{C}_2\)の operad の構造を cover するような operad の構造が入る。
\(\mathcal{C}_2(j)\) は, 複素平面の configuration space \(\mathrm{Conf}_{j}(\bbC )\) とホモトピー同値であるが, \(\mathrm{Conf}_{j}(\bbC )\) のuniversal cover については,
hyperplane arrangement の complement としての研究がある。
多重ループ空間のモデルに用いられるものとしては, little cubeの空間の他にも Milgram の permutahedron
を用いたもの [Mil66] や Segal による configuration space によるもの [Seg73] などがある。 Little cube
の空間とこれら空間の関係については, C. Berger [Ber96] を見るとよい。もっとも, この論文はフランス語 なので,
Osnabrück で行なわれた1998年の workshop のまとめに入っている C. Berger の解説を読むのがよいだろう。
この「まとめ」の中には他にも有用な解説が含まれていて, operad を扱う際には一度は目を通しておくべきである。
他には, little disk の空間や configuration space の Fulton-MacPherson compactification
[FM94] として得られる空間も little cube の空間とホモトピー同値である。これは Kontsevich [Kon99] による, little
disk の空間が formal であることの証明に使われている。Sinha の [Sin06] では, Kontsevich operad
と呼ばれている。
- Kontsevich operad
- little disk の空間は formal
この Kontsevich の formality は, Hochschild cochain に little disk operad の singular
cochain complex からできた operad が作用するという Deligne予想と組み合わせることにより, deformation
quantization の formality を得るためのものである。
この Deligne 予想のように代数的な構造を調べる際にも little disk (cube) の空間が使われるようになってきたのは面白い。
この Kontsevich の結果の証明を詳しく書いたものとして, Lambrechts と Volic の [LV] がある。彼らの
motivation は, Goodwillie と Weiss の埋め込みの空間の calculus のようである。彼らは, Kontsevich
の証明を詳しく書いただけでなく, 3つの拡張 (改良) も得ている。
他にも, Tamarkin による formality の証明 [Tam03] があり, その際の quasi-isomorphism
の列と Kontsevich の quasi-isomorphism の列の比較が, Severa と WillWacher [ŠW11]
により行なわれている。
Petersen [Pet14] は Grothendieck-Teichmüller group を使った証明を与えていて, 興味深い。
\(\cC _{n}\) は, \(E_{n}\)-operad なので, 当然 \(E_{n}\)-algebra を調べるときには, 必要になる。例えば, factorization homology など。 実際
Lurie の [Lur] の Chapter 5 は, little cube に関することである。
上記のように立方体ではなく disk を使う流儀もある。関連した空間として, disk の中に埋め込まれたいくつかの disk の
configuration space がある。 Kontsevich のように, operad として考える場合は, 半径に制限をつけないが,
応用トポロジーでは, 半径を一定にした disk の configuration space が考えられている。Carlsson ら [Car+] は
configuration space of hard disks と呼んでいる。
- configuration space of hard disks
次元の違う disk を入れることも考えられている。Alpert [Alp] は, 線分の円板の中の配置の成す空間を考えている。この Alpert
の論文では, これらの空間に関する様々な予想や問題が提案されている。
References
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