安定ホモトピー論においては, \(\mathrm {BP}\)理論等を用いてホモトピー論的情報を \(v_n\) 周期的な情報に分割して調べることが有効であることがわかっている。
非安定ホモトピー論においては, \(v_0\)周期的な情報は, 有理ホモトピー論として代数的に扱うことができることが分っている。 \(v_1\)周期的ホモトピー群については,
D. Davisらによる計算があるが, 有理ホモトピー論のような「\(v_1\) 周期的ホモトピー論」と言えるべきものにはなっていない。
安定ホモトピー論と比較すると, Hopkins らにより Ravenel の一連の予想 [Rav84] が解決される以前, いや Ravenel
の予想の登場以前の段階と言えるだろう。 一般の \(v_n\) について, 安定ホモトピー論に近いような理論を構築するにはまだ時間がかかりそうである。
Kuhn (と Bousfield) の作った \(K(n)\)-localization を与える spectrum に値を持つ関手 [Kuh08] は, stable
な情報を unstable な世界に持ち込むための一つのヒントになるかもしれない。 実際, Kuhn は unstable \(v_n\)-periodic
homotopy group を, この functor を用いて定義することを提案している。
- Bousfield-Kuhn functor \(\Phi _{K(n)}\)
- \(v_{n}\)-periodic homotopy groups
Barthel, Heuts, and Meier は, \(v_{n}\)-periodic homotopy group を全て合せると,
弱ホモトピー同値を detect できることを示している。 つまり, 全ての \(n\) に対し \(v_{n}\)-periodic homotopy group
の同型を誘導する写像は弱ホモトピー同値であることを示している。 彼等は periodic homotopy group に対する Whitehead
の定理と呼んでいる。
有理ホモトピー論における Quillen や Sullivan の仕事の \(v_{n}\)版を, この Bousfield-Kuhn functor を用いて
spectral algebra の世界で実現することを最初に考えたのは, Behrens と Rezk だろう。 彼等の論文 [BR20a]
の結果が発表されたのは 2012年らしいが, 技術的な困難があって, arXiv に登場するまでにかなり時間がかかったようである。
その間に, Arone と Ching や Heuts がより conceptual なアプローチを発表したようであるが, Arone と
Ching の “Localized Taylor towers” はまだ登場していない。 Heuts ものは, 論文としては [Heu21]
に対応するのだろう。 Heuts は, これらの仕事について [Heu20] という survey を書いている。 また Behrens と Rezk も
[BR20b] という survey を書いている。
- spectral Lie algebra model
Behrens と Rezk は, 空間 \(X\) の \(K(n)\)-local Bousfield-Kuhn functor から \(X\) の \(K(n)\)-local
Spanier-Whitehead dual の topological André-Quillen cohomology への natural
transformation \[ \Phi _{K(n)}(X) \rarrow {} \textrm {TAQ}_{S_{K(n)}}(S_{K(n)}^{X}) \] を構成している。
Ching [Chi05] の結果により, 右辺は spectral Lie algebra, つまり Ching による spectrum の
category での Lie operad の類似上の algebra になるので, rational homotopy theory での Lie
algebra model の類似になる, ということである。
Eldred, Heuts, Methew, Meier [Eld+19] は, この Bousfield-Kuhn functor が right
adjoint を持つことを用い, \(v_{n}\)-periodic equivalence で localize した pointed space の \(\infty \)-category \(M_{n}^{f}\) が,
その adjunction に付随する monad 上の algebra の category と同値であると言っている。そして,
その monad と Ching の spectral Lie algebra の関係を明らかにしたのが, Heuts の [Heu21]
である。
一方, 非安定ホモトピー論では, Cohen-Moore-Neisendorfer らによる exponent の研究からも示唆されるように,
\(v_n\)周期的情報だけでなく \(v_n\)-torsion を調べることも重要である。それは, 私の thesis [Tam93] のテーマでもあった。
これについては, やはり Bousfield-Khun functor を用いた試みとして, Guozhen Wang の thesis
[Wan15] がある。 彼は, \(p\ge 5\) に対して \(\Phi _{K(2)}S^{2k+1}\) の \(v_{1}\)-exponent が有限であることを示している。また \(S^{3}\) の \(v_{1}\)-exponent が \(2\)
であることを予想している。 その根拠の一つとして, 私の計算 [Tam94] も挙げられている。
Wang の thesis では, より一般に, 球面の \(v_{n}\)-torsion の \(v_{n}\)-exponent が有限であると予想されているが,
それがほとんどの人の認識だと思う。
References
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