Operad に関する基本的な事柄

May による operad の定義 [May72] は, 位相空間 (コンパクト生成な空間) の圏におけるものである。 今では, 様々な圏 (symmetric monoidal 構造を持つ圏) に一般化されているが, まず最初は May の original な定義を理解すべきだろう。 一般的な定義については, Markl と Shnider と Stasheff の [MSS02] を見るとよい。 圏と関手の言葉に慣れていないと読みづらいが。

  • 位相空間の圏での operad の定義
  • symmetric monoidal category での preoperad と operad の定義
  • operad の morphism の定義

Operad の条件を少し弱めたものもある。

  • non-\(\Sigma \) operad あるいは nonsymmetric operad
  • quasi-operad

Non-\(\Sigma \) operad は, 対称群の作用を考えないものである。Symmetric でない monoidal category でも定義できる。 解説として, Giraudo の [Gir] がある。

Quasi-operad は Ralph Kaufmann [Kau05] により, サボテン operad の変種を考える際に導入された概念で, 結合律を仮定しないものである。

Operad は複数の入力と一つの出力を持つものと考えられるが, 対称群の作用により, その入力を入れ替えることができる。更に, (どれか一つの) 入力と出力も切り替えることができるものを cyclic operad という。Non-\(\Sigma \) operad でも考えられる。

このような複雑なものを理解するときは, なるべく多くの例を手にとってみる のがよい。まず基本的なのは endomorphism operad である。

  • symmetric monoidal category \(\mathcal {C}\) の object \(X\) の endomorphism operad \(\mathcal {E}nd_X\)

様々な複雑な構造は, operad の作用という形で, 簡潔に述べることができる。 \(n\)重ループ空間の特徴付けもそうであるが, 代数的な構造の方が分りやすいだろう。

  • operad の作用

ある operad \(\mathcal {C}\) が \(X\) に作用するとき, \(X\) は \(\mathcal {C}\)-algebra であると言ったりする。これは, May の本 [May72] から使われている用語であるが, 単に \(\mathcal {C}\) が作用するだけなので, \(\mathcal {C}\)-module と言った方が良いような気がする。実際, Gambino と Joyal [GJ17] は operad の両側からの作用を持つものを operad 上の bimodule と呼んでいる。 ただし, associativity operad \(\mathcal {A}\) が \(X\) に作用することと \(X\) が associative な積を持つことは同値なので, 可換環上の module の圏での \(\mathcal {A}\)-algebra は associative algebra と同等な概念である。この意味 で \(\mathcal {C}\)-algebra という言い方は理にかなっている。

  • associative algebra の特徴付け
  • commutative algebra の特徴付け

Operad 上の algebra があれば, その上の module の圏を考えるべきだろう。 それについては, Horel の [Hor] を見るとよい。

  • operad 上の algebra 上の module

McClure と Smith は, [MS02] で, operad with multiplication という構造を定義した。それは associativity operad からの non-\(\Sigma \) operad の morphism を指定することと同値である。

  • operad with multiplication
  • operad with multiplication に associate した cosimplicial object

Operad を理解するためのイメージとして, \(n\)個の入力から\(1\)個のものを出力する箱というものがある。 このイメージに従えば, operad \(\mathcal {C}\) に対し, \(\mathcal {C}(n)\) は \(\mathcal {C}(n;1)\) と書いた方が正確である, と言える。 一方, operad の operation は合成のようなものだから, 圏の morphism の合成との関係を考えるのは自然である。そこで operad のある意味での categorification (many-objectification) として colored operad という概念が導入された。それは, multicategory という概念と同じものである。

Operad の圏では様々な構成ができる。 ファイブレーションコファイブレーションなどの概念, つまりモデル圏の構造を定義できることも多い。

また operad の圏では, operad の tensor product という操作 [Dun88; BV73; BV79] も重要である。

  • operad の tensor product

Dunn [Dun88] は, little cubes operad について, \(\mathcal {C}_k\) と \(\mathcal {C}_{\ell }\) の tensor product が, \(\mathcal {C}_{k+\ell }\) と weak equivalent であることを示している。

Fiedorowicz と Vogt は, [FV15] で, より一般に \(E_k\)-operad と \(E_{\ell }\)-operad の tensor product について調べている。 一般には, \(E_k\)-operad と \(E_{\ell }\)-operad の tensor product は \(E_{k+\ell }\)-operad になるとは限らないが, 共に cofibrant な \(E_k\)-operad と \(E_{\ell }\)-operad の tensor product は, \(E_{k+\ell }\)-operad になることを示している。位相空間の category での operad について, であるが。

References

[BV73]

J. M. Boardman and R. M. Vogt. Homotopy invariant algebraic structures on topological spaces. Lecture Notes in Mathematics, Vol. 347. Berlin: Springer-Verlag, 1973, pp. x+257.

[BV79]

J. M. Boardman and R. M. Vogt. “Tensor products of theories, application to infinite loop spaces”. In: J. Pure Appl. Algebra 14.2 (1979), pp. 117–129. url: http://dx.doi.org/10.1016/0022-4049(79)90001-X.

[Dun88]

Gerald Dunn. “Tensor product of operads and iterated loop spaces”. In: J. Pure Appl. Algebra 50.3 (1988), pp. 237–258. url: http://dx.doi.org/10.1016/0022-4049(88)90103-X.

[FV15]

Z. Fiedorowicz and R. M. Vogt. “An additivity theorem for the interchange of \(E_n\) structures”. In: Adv. Math. 273 (2015), pp. 421–484. arXiv: 1102.1311. url: https://doi.org/10.1016/j.aim.2014.10.020.

[Gir]

Samuele Giraudo. Nonsymmetric operads in combinatorics. arXiv: 2104.12398.

[GJ17]

Nicola Gambino and André Joyal. “On operads, bimodules and analytic functors”. In: Mem. Amer. Math. Soc. 249.1184 (2017), pp. v+110. arXiv: 1405.7270. url: https://doi.org/10.1090/memo/1184.

[Hor]

Geoffroy Horel. Operads, modules and topological field theories. arXiv: 1405.5409.

[Kau05]

Ralph M. Kaufmann. “On several varieties of cacti and their relations”. In: Algebr. Geom. Topol. 5 (2005), 237–300 (electronic). arXiv: math/0209131. url: http://dx.doi.org/10.2140/agt.2005.5.237.

[May72]

J. P. May. The geometry of iterated loop spaces. Lectures Notes in Mathematics, Vol. 271. Berlin: Springer-Verlag, 1972, pp. viii+175.

[MS02]

James E. McClure and Jeffrey H. Smith. “A solution of Deligne’s Hochschild cohomology conjecture”. In: Recent progress in homotopy theory (Baltimore, MD, 2000). Vol. 293. Contemp. Math. Providence, RI: Amer. Math. Soc., 2002, pp. 153–193. arXiv: math/ 9910126. url: http://dx.doi.org/10.1090/conm/293/04948.

[MSS02]

Martin Markl, Steve Shnider, and Jim Stasheff. Operads in algebra, topology and physics. Vol. 96. Mathematical Surveys and Monographs. American Mathematical Society, Providence, RI, 2002, pp. x+349. isbn: 0-8218-2134-2. url: https://doi.org/10.1090/surv/096.