Topological insulator について初めて聞いたのは, 2011年末の理化学研究所でのワークショップ
「数理連携10の根本問題の発掘」だった。
\(K\)-theory の Bott periodicity が 物性物理学が現れることに興味を持ち, どうして \(K\)-theory
が関係してくるのかを理解しようと文献を漁ってみたが, なかなか理解が進まなかった。
その後, 数学的に定式化された Freed と Moore の [FM13] が出たおかげで, ようやく\(K\)-theory, より正確には twisted
\(K\)-theory, との関係が理解できた。 また, 2013年11月下旬に琵琶湖の辺で 物理と数 学の研究者による合同勉強会 が開催され,
そこで数学側の人間として Freed-Moore の論文の解説をさせてもらったが, そのときの議論で更に理解が進んだ。
そのときの理解によると, topological insulator は bulk と edge から成り, bulk は insulator, edge が
metal として振る舞うものであるが, Freed と Moore で考えられているのは bulk の部分の数学的な理論である。
Hamiltonian の spectrum に gap があるということで insulator を定義し, その homotopy 類を考える。また,
原子が規則正しく配置されている状態を Euclid空間 \(E\) の lattice とみなし, その対称性を変換群を通して見るわけであるが, lattice
の平行移動からなる free Abelian group \(\Pi \) の state space への作用から, \(\Pi \) の Pontrjagin dual \(\widehat {\Pi }\)
上の vector bundle が得られ, \(\widehat {\Pi }\) の \(K\)-theory の元が得られる。 結晶構造には, 平行移動以外に点群 (point
group) \(P\) として表される一点の周り の回転などの対称性があるが, その \(P\) の作用により \(P\)- equivaraint \(K\)-theory
の元が得られるのである。更に, 量子力学の対称性から twisting が与えられ, twisted equivariant \(K\)-theory
の元となる。
Freed と Moore の論文の twisted equivariant \(K\)-theory を \(C^*\)-algebra の twisted equivariant
\(K\)-theory に変えたものとして Thiang の [Thi16] が出た。 同じく \(C^*\)-algebra を用いたものとして, Kellendonk の
[Kel] が出た。そこで提起されているのは, insulator wを定義するときの Hamiltonian の homotopy
として何が正しいか, という問題である。 Hilbert 空間上の bounded operator の空間 \(B(H)\) の位相として Freed と Moore
のアプローチでは compact-open topology が使われているが, それでは index theory が自明になってしまう,
と言っている。 Kellendonk によると, Thiang のアプローチはこの問題を解決するために \(C^*\)-algebra を用いているが,
その物理学的意味を見つけるのが難しいらしい。 Kellendonk は van Daele の \(K\)-theory [Van88a; Van88b]
を用いることを提案している。
van Daele の \(K\)-theory を用いたものとしては, Kubota による [Kub16; Kub17] もある。 後者の論文
[Kub17] の Introduction には 最近のこの分野の動向について文献を挙げてまとめられているので便利である。
Bourne と Kellendonk と Rennie [BKR17] は Kasparov の \(KK\)-theory の real
版を使うことを提案している。
このような 「 非可換な」視点から見た方が, 色んなことが説明し易くなるとすると興味深い。Bellissard ら [BBG06;
Bel03] のように aperiodic solid を扱うためには noncommutative geometry を使うべき,
と主張している人達がいるからである。
Sati と Schreiber [SS23] は, de Rham complex の情報も入れた twisted equivariant
differential \(K\)-theory を使うことを提案している。
同じく twisted \(K\)-theory が出てくる物理の話題として D-brane, torus や Pontrjagin duality
に関係したものとして T-duality があるが, topological insulator とこれらの関係についても調べられ始めた。 Mathai と
Thiang らの [MT15; MT16a; MT16b; HMT16] など。
\(K\)-theory が出てくるということは, 他の(コ)ホモロジー論も使えるのではないか, という気がしてくる。実際, bordism 群
を使ったものがある。Kapustin の [Kapb; Kapa] や Freed の [Fre]である。Kapustin の仕事については,
Summer School 数理物理 2014 の際に教えてもらった。Kapustion のものは, bordism 群の Pontrjagin dual
を用いているが, Freed はそれを spectrum level で考えることを提案し, Brown-Comenetz dual を用いている。
使われている spectrum も Madsen-Tillmann spectrum である。 これらは, Gu と Wen らによる
群のコホモロジーを用いた分類の精密化になっているようである。
References
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[Van88b]
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