Gel\('\)fand-Naimark duality より, 可換な \(C^*\)-algebra を位相空間と同等なものとして扱い, 非可換 \(C^*\)-algebra
を「非可換空間」と考えようというのが, 非可換幾何学(トポロジー)の立場である。 実際, ordinary cohomology や \(K\)-theory
に対応するものが, \(C^*\)-algebra のレベルで定義されている。
このことから, \(C^*\)-algebra のホモトピー論, つまり \(C^*\)-algebra の圏 (を拡張した圏) に model category
の構造を定義するという問題が考えられる。実際, Hovey の本 [Hov99] の最後にも, この問題が取り上げられている。
- 可換な \(C^*\)-algebra の圏を拡張した圏で, 位相空間全体の圏と同値になるものはどんなものか?
- 非可換なものも含めた \(C^*\)-algebra の圏 (を拡張した圏) に model structure を定義することはできるか?
まず, model category になるためには limit と colimit で閉じていないといけないが, それについては, Meyer の
[Mey08] に書いてある。
一方, limit を考える手段としては pro-\(C^*\)-algebra もある。
- pro-\(C^*\)-algebra あるいは locally \(C^*\)-algebra
Kuznetsova の [Kuz] では, pro-\(C^*\)-algebra の文献として, Inoue の [Ino71], Fragoulopoulou の
[Fra81], Phillips の [Phi88] などが挙げられている。Phillips は quasitopological space
という概念を考えている。
Gel\('\)fand-Naimark duality から, 可換な pro-\(C^*\)-algebra は compact Hausdorff space の
colimit として表わされる空間, つまり compactly generated space に対応するものと期待されるが, El Harti と
Lukács の [HL] によると, そうではないらしい。
さて, compactly generated Hausdorff space の圏に対応するものが可換な pro-\(C^*\)-algebra ではないとなると,
どう考えればよいのだろうか。現在, いくつかのアプローチが知られている。
Johnson と Joachim の [JJ06] では, やはり limit を考え, \(\nu \)-sequentially complete \(l.m.c.\)-\(C^*\)-algebra
という種類の \(C^*\)-algebra の圏に, model structure を定義している。
Østvær は, [Øst10] で Yoneda Lemma により, \(C^*\)-algebra の圏を集合に値を持つ presheaf
の圏に埋め込むことにより各種操作を可能にし, 更に集合を cubical set に拡張することにより, ホモトピー論ができるようにしている。これは,
最近よく用いられる手法である。 Cubical set ではなく simplicial set を使う方が普通であるが。
Uuye [Uuy13] は, \(C^*\)-algebra の圏を “fibrant object の成す圏” とみなすことを提案している。“Category
of fibrant objects” とは, K.S. Brown [Bro73] によって導入された, model category
よりも弱い概念である。通常の homotopy 同値や \(KK\)-equivalence に対応する “category of fibrant objects”
の構造があることを示している。
このように, \(C^*\)-algebra の圏でホモトピー論を行なう試みは様々なものがあるが, その理由の一つは, そのままでは model
structure が存在しないからである。 これは, Anderson と Grodal が最初に気が付いたことのようである。Uuye の
[Uuy13] の Appendix に証明がある。
群作用を持つ空間の \(C^*\)-algebra での類似も考えられている。もちろん, 群の代わりにある種の Hopf algebra を使う必要がある。
Gel\('\)fand-Naimark の対応が contravariant だから, 作用の代わりに coaction を考えるのが自然だと思うのだが, Hopf
algebra の \(C^*\)-algebra への作用を考えている人もいる。特に, 量子群の作用など。
References
-
[Bro73]
-
Kenneth S. Brown. “Abstract homotopy theory and generalized sheaf
cohomology”. In: Trans. Amer. Math. Soc. 186 (1973), pp. 419–458.
url: https://doi.org/10.2307/1996573.
-
[Fra81]
-
Maria Fragoulopoulou. “Spaces of representations and enveloping
l.m.c. \({}^*\)-algebras”. In: Pacific J. Math. 95.1 (1981), pp. 61–73. url:
http://projecteuclid.org/euclid.pjm/1102735529.
-
[HL]
-
Rachid El Harti and Gábor Lukács. Bounded and unitary elements
in pro-\(C^*\)-algebras. arXiv: math/0511068.
-
[Hov99]
-
Mark Hovey. Model categories. Vol. 63. Mathematical Surveys and
Monographs. Providence, RI: American Mathematical Society, 1999,
p. xii 209. isbn: 0-8218-1359-5.
-
[Ino71]
-
Atsushi Inoue. “Locally \(C^{\ast } \)-algebra”. In: Mem. Fac. Sci. Kyushu Univ.
Ser. A 25 (1971), pp. 197–235.
-
[JJ06]
-
Michael Joachim
and Mark W. Johnson. “Realizing Kasparov’s \(KK\)-theory groups as the
homotopy classes of maps of a Quillen model category”. In: An alpine
anthology of homotopy theory. Vol. 399. Contemp. Math. Providence,
RI: Amer. Math. Soc., 2006, pp. 163–197. arXiv: 0705.1971. url:
http://dx.doi.org/10.1090/conm/399/07518.
-
[Kuz]
-
Yulia Kuznetsova. A duality for Moore groups. arXiv: 0907.1409.
-
[Mey08]
-
Ralf Meyer. “Categorical aspects of bivariant \(K\)-theory”. In: \(K\)-theory
and noncommutative geometry. EMS Ser. Congr. Rep. Eur.
Math. Soc., Zürich, 2008, pp. 1–39. arXiv: math/0702145. url:
http://dx.doi.org/10.4171/060-1/1.
-
[Øst10]
-
Paul Arne Østvær. Homotopy theory of
\(C^*\)-algebras. Frontiers in Mathematics. Birkhäuser/Springer Basel AG,
Basel, 2010, p. 139. isbn: 978-3-0346-0564-9. arXiv: 0812.0154. url:
https://doi.org/10.1007/978-3-0346-0565-6.
-
[Phi88]
-
N. Christopher Phillips. “Inverse limits of \(C^*\)-algebras”. In: J. Operator
Theory 19.1 (1988), pp. 159–195.
-
[Uuy13]
-
Otgonbayar Uuye. “Homotopical algebra for \(\mathrm{C}^*\)-algebras”. In: J.
Noncommut. Geom. 7.4 (2013), pp. 981–1006. arXiv: 1011.2926. url:
https://doi.org/10.4171/JNCG/141.
|