低次元多様体のトポロジーと幾何

「低次元」多様体とはあいまいな名前であるが, 普通は \(3\)次元および \(4\)次元の多様体のことを意味するのだろう。 Kirby の低次元トポロジーの問題のリスト [Kir97] でも \(4\)次元以下が中心である。この Kirby の問題集は, ここから download できる。

これらの次元が特別扱いされているのは, これらの次元が難しいからである。 逆に \(5\)次元以上の多様体については, 統一した理論が構築できることが多い。 Poincaré 予想がその代表的な例である。 手術の理論についても, やはり \(5\)次元以上の理論が \(4\)次元以下では通用しない。

\(3\)次元では, まず Thurston の geometrization conjecture を知っておくべきだろう。\(3\)次元の Poincaré 予想の一般化となっているからである。Thurston の lecture note は, 最近 MSRI から download できるようになった。

\(4\)次元多様体の理論は, 1980年代に Freedman と Donaldson の仕事により大きく発展した。また偶数次元であることから, symplectic 多様体の構造を持つものもあり, その研究も Gromov 以降の symplectic geometryの発展により, 活発になった。

しかしながら, 2004年の Clay 数学研究所での Stern の講演 [Ste06] によると, \(4\)次元可微分および symplectic 多様体の分類には程遠いようである。

\(3\)次元や \(4\)次元の多様体を調べる際には, その中の \(1\)次元および \(2\)次元部分多様体が重要な役割を果す。例えば, 結び目など。 結び目を始め, 低次元多様体を調べるために, 各種不変量が定義されている。

\(2\)次元多様体で向き付け可能なものは, Riemann 面の構造が入ったりするので, 他の次元とは一味違っている。

References

[Kir97]

“Problems in low-dimensional topology”. In: Geometric topology (Athens, GA, 1993). Ed. by Rob Kirby. Vol. 2. AMS/IP Stud. Adv. Math. Providence, RI: Amer. Math. Soc., 1997, pp. 35–473. url: http://math.berkeley.edu/~kirby/problems.ps.gz.

[Ste06]

Ronald J. Stern. “Will we ever classify simply-connected smooth 4-manifolds?” In: Floer homology, gauge theory, and low-dimensional topology. Vol. 5. Clay Math. Proc. Amer. Math. Soc., Providence, RI, 2006, pp. 225–239. arXiv: math/0502164.