古典的な結び目と絡み目の理論

結び目は, 絵に描けるし「トポロジーらしい」ので, ちょっとトポロジーを勉強してみようという人が最初に目をつけることが多い。 4年生のセミナーで「結び目をやりたい」という人もよく現われる。 しかしながら, 数学的にきちんと扱うのは, それほど簡単ではない。 Euclid空間のトポロジーがまず難しいからである。 Rolfsen の本 [Rol90] にはその辺が詳しく書いてあるので, よいと思う。

他にも結び目の本は色々ある。Chmutov と Duzhin と Mostovoy の [CDM12] は, Vassiliev の finite type invariant の解説であるが, 前半に結び目の解説がある。主要な基本的事実は, 述べてあるだけで証明はないが, 最初に読むにはよいかもしれない。

古典的な結び目の理論の歴史については, arXiv に Przytycki による [Prz] がある。 Birman の Lorenz knot に関する survey [Bir] の最初にも結び目や絡み目の研究の歴史がまとめられている。

Dror Bar-Natanら が始めた Knot Atlas というサイトには, 様々なデータが集約されている。

  • 結び目 (knot)
  • 絡み目 (link)

結び目や絡み目を扱う際には, Reidemeister move という操作が基本的である。 Reidemeister move に基づいた代数的構造を記述するものとして quandle と呼ばれるものがある。

結び目や絡み目は, ambient isotopic なものを同じものとみなすが, 他にも色々な関係が定義されている。 例えば, Fox と Milnor [FM66] により導入された concordance という関係がある。Livingston [Liv05] による survey がある。

  • concordance
  • concordance group

Gordon は[Gor81] で ribbon concordance を導入し, ribbon concordance が partial order になるという予想を立てた。 Agol がとても短かい証明 [Ago22] 発見した。 これについては, Quanta Magazine の記事がある。

結び目に関連したものとして次のようなものがある。

一般化も色々考えられている。

結び目や絡み目は, 様々な不変量を用いて研究されてきた。 最も基本的な不変量は結び目の \(S^3\) 内での補集合の 基本群, つまり knot group である。他にも様々な不変量が 構成されている。

Knot group を tangle に一般化したのが Armstrong の [Arm] である。Tangle は tangle category と呼ばれる small category の morphism であるが, Armstrong は knot に対し knot group を対応させる対応の拡張となる functor を作った。

  • tangle
  • tangle category

References

[Ago22]

Ian Agol. “Ribbon concordance of knots is a partial ordering”. In: Commun. Am. Math. Soc. 2 (2022), pp. 374–379. arXiv: 2201.03626. url: https://doi.org/10.1090/cams/15.

[Arm]

John Armstrong. The Extension of Knot Groups to Tangles. arXiv: math/0509665.

[Bir]

Joan S. Birman. Lorenz knots. arXiv: 1201.0214.

[Bir74]

Joan S. Birman. Braids, links, and mapping class groups. Annals of Mathematics Studies, No. 82. Princeton, N.J.: Princeton University Press, 1974, pp. ix+228.

[CDM12]

S. Chmutov, S. Duzhin, and J. Mostovoy. Introduction to Vassiliev knot invariants. Cambridge: Cambridge University Press, 2012, pp. xvi+504. isbn: 978-1-107-02083-2. arXiv: 1103.5628. url: http://dx.doi.org/10.1017/CBO9781139107846.

[FM66]

Ralph H. Fox and John W. Milnor. “Singularities of \(2\)-spheres in \(4\)-space and cobordism of knots”. In: Osaka J. Math. 3 (1966), pp. 257–267.

[Gor81]

C. McA. Gordon. “Ribbon concordance of knots in the \(3\)-sphere”. In: Math. Ann. 257.2 (1981), pp. 157–170. url: https://doi.org/10.1007/BF01458281.

[Liv05]

Charles Livingston. “A survey of classical knot concordance”. In: Handbook of knot theory. Elsevier B. V., Amsterdam, 2005, pp. 319–347. arXiv: math/0307077. url: https://doi.org/10.1016/B978-044451452-3/50008-3.

[Prz]

Jozef H. Przytycki. History of Knot Theory. arXiv: math/0703096.

[Rol90]

Dale Rolfsen. Knots and links. Vol. 7. Mathematics Lecture Series. Corrected reprint of the 1976 original. Houston, TX: Publish or Perish Inc., 1990, pp. xiv+439. isbn: 0-914098-16-0.