Bousfield と Kan による一般的なホモトピー極限の理論 [BK72] は, 既にかなりモデル圏的な議論を用いていた。
- 小圏 \(C\) から位相空間の圏への関手の成す圏 \(\category {Top}^{C}\) において, 弱同値と cofibration を object ごとの弱同値と
cofibration として定義したモデル構造
- 小圏 \(C\) から位相空間の圏への関手の成す圏 \(\category {Top}^{C}\) において, 弱同値と fibration を object ごとの弱同値と fibration
として定義したモデル構造
モデル圏の言葉でいえば, homotopy (co)limit とは関手 \[ \begin {split} \colim & : \category {Top}^{C} \longrightarrow \category {Top} \\ \lim & : \category {Top}^{C} \longrightarrow \category {Top} \end {split} \] からホモトピー圏の間の関手 \[ \begin {split} \mathrm {ho}(\colim ) & : \mathrm {ho}(\category {Top}^{C}) \longrightarrow \mathrm {ho}(\category {Top}) \\ \mathrm {ho}(\lim ) & : \mathrm {ho}(\category {Top}^{C}) \longrightarrow \mathrm {ho}(\category {Top}) \end {split} \] を構成しようという試みである。もちろん,
これは一般には不可能である。 ホモロジー代数では, half exact functor に対し derived functor が定義されるが, \(\colim \) や \(\lim \)
のようにモデル構造を半分だけ保つ関手に対して, その total derived functor が定義される。
さて, ホモトピー極限の存在のためには, どのような性質が必要かという問題については, Hirschhorn の web site にある,
彼と共同研究者による仕事の preprint を見るとよい。 最近出版された Dwyer と Hirschorn と Kan と Smith の本
[Dwy+04] では, weak equivalence だけを持つ圏について考えている。
具体的な条件としては, simplicial model category という条件が重要である。その条件を弱めようという試みを
Chachólski と Scherer が [CS08] で行なっている。彼等は, その前に [CS02] という試みも行なっている。
そこでの重要な概念は, model approximation である。彼等は model approximation を持つ圏では,
モデル圏とかなり近いことができることを確かめている。他の扱いとしては, Thomason による homotopy end
を用いたものもある。Weibel による Thomason のノートに基づいた解説が [Wei01] にある。
Radulescu-Basu の [Rad] は, cofibration と weak equivalence のみ持つ, 所謂 cofibration
category での homotopy colimit を考えたものである。
位相空間や simplicial set の圏では, (co)simplicial space を用いた具体的な構成があるが, これらの構成が, total
derived functor を用いた構成と一致するか, というのは自然な疑問である。 この疑問に対する一つの答えは, Dwyer と
Hirschhorn と Kan の [DHK] にある。 まずは以下のことを知っておく必要がある。
- \(\hocolim \) は, object ごとに cofibrant な図式の間の弱同値を cofibrant な object の弱同値にうつす。
- \(\hocolim \) は total left derived functor を持つ。
- \(\holim \) は object ごとに fibrant な図式の間の弱同値を fibrant な object の弱同値にうつす。
- \(\holim \) は total right derived functor を持つ。
- \(L\hocolim \) と \(L\colim \) の間に natural isomorphism がある。
- \(R\holim \) と \(R\lim \) の間に natural isomorphism がある。
つまり, \(\hocolim \) は \(\colim \) の total left derived functor ではないし, \(\holim \) は \(\lim \) の total right derived functor ではない,
ということである。 よって \(\hocolim \) や \(\holim \) は, 一般の図式の弱同値を保つかどうかは分らないのであるが, object ごとに (co)fibrant
な図式に対してはホモトピー不変性を持つ。よって, “正しい” homotopy (co)limit は, (co)fibrant replacement
を行ってから取ったものであることがわかる。
“古典的な” homotopy (co)limit と derived functor としての homotopy (co)limit の関係については,
Shulman の [Shu] に書かれている。
他には, Rodriguez-Gonzalez の [Rod14] で relative category を用いて定義されている realizable
homotopy colimit などもある。
- realizable homotopy colimit
Rodriguez-Gonzalez は, 他の homotopy colimit の構成 (定義) として derivator の context で定
義されるものや, Voevodsky の [Voe10] で定義されるものを挙げている。
References
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[BK72]
-
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and localizations. Vol. 304. Lecture Notes in Mathematics. 2nd
corrected printing 1987. Berlin: Springer-Verlag, 1972, p. v 348.
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[CS02]
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Wojciech Chachólski and
Jérôme Scherer. “Homotopy theory of diagrams”. In: Mem. Amer.
Math. Soc. 155.736 (2002), pp. x+90. arXiv: math/0110316. url:
http://dx.doi.org/10.1090/memo/0736.
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[CS08]
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Wojciech Chachólski and Jerome Scherer. “Representations of
spaces”. In: Algebr.
Geom. Topol. 8.1 (2008), pp. 245–278. arXiv: math/0511577. url:
https://doi.org/10.2140/agt.2008.8.245.
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[DHK]
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Willam G. Dwyer, Phillip S. Hirschhorn, and Daniel M. Kan. Model
Categories and More General Abstract Homotopy Theory: A Work
in What We Like to Think of as Progress. url: https://people.math.rochester.edu/faculty/doug/otherpapers/dhk.pdf.
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[Dwy+04]
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William G. Dwyer, Philip S. Hirschhorn, Daniel M. Kan,
and Jeffrey H. Smith. Homotopy limit functors on model
categories and homotopical categories. Vol. 113. Mathematical
Surveys and Monographs. American Mathematical Society,
Providence, RI, 2004, pp. viii+181. isbn: 0-8218-3703-6. url:
https://doi.org/10.1090/surv/113.
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[Rad]
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math/0610009.
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Beatriz Rodríguez González. “Realizable homotopy colimits”. In:
Theory Appl. Categ. 29 (2014), No. 22, 609–634. arXiv: 1104.0646.
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[Shu]
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Michael Shulman. Homotopy limits and colimits and enriched
homotopy theory. arXiv: math/0610194.
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[Voe10]
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Vladimir Voevodsky. “Simplicial radditive functors”. In: J.
K-Theory 5.2 (2010), pp. 201–244. arXiv: 0805 . 4434. url:
http://dx.doi.org/10.1017/is010003026jkt097.
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[Wei01]
-
Charles Weibel. “Homotopy ends and Thomason model categories”.
In: Selecta
Math. (N.S.) 7.4 (2001), pp. 533–564. arXiv: math/0106052. url:
http://dx.doi.org/10.1007/s00029-001-8098-3.
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