2つの次数と2つの微分を持つ chain complex の変種で, double (chain) complex とか bicomplex
と呼ばれるものがある。 2つの chain complex の tensor product や複素多様体のコホモロジーなどで登場するので,
かなり古くから使われているものであり, ホモロジー代数の教科書でも扱われていたりするが, まとまった解説があるのかどうかよく知らない。
最近のものでは, Stelzig の [Ste21] や Khovanov と Qi の [KQ20] の §2 がある。 これらの文献では, 体上の
double complex の基本的な性質として, square と zigzag への分解があることが挙げられ, その証明が書かれている。
Double complex のホモロジーとしては, まず水平方向と垂直方向の微分で取ったホモロジーがある。
- horizontal (co)homology
- vertical (co)homology
そして, total chain complex として微分 (と次数) を一つにまとめて chain complex を構成し,
そのホモロジーを取ることもできる。
他にも, 複素多様体の研究などで登場する Bott-Chern (co)homology や Aeppli (co)homology
などもある。
- Bott-Chern (co)homology
- Aeppli (co)homology
これらについては, Angella の解説 [Ang] がある。
また, これらは Bergman の [Ber12] では, receptor と donor として定義されている。Bergman は,
horizontal homology と vertical homology とこれら2つのホモロジーについて調べている。
この4種類のホモロジーの一般化として, Goswami [Gos21] が \(L\)-homology というものを定義している。
Double complex を一般化した multicomplex という概念もある。 [Hue04] によると homological
perturbation theory で重要な概念らしい。
Muro と Roitzheim の [MR19] では, bigraded であるが, 微分が斜めの方向に進む twisted
complex というものが考えられている。 Derived \(A_{\infty }\)-algebra の underlying structure として現れる,
らしい。
References
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[Ang]
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Daniele Angella. On the Bott-Chern and Aeppli cohomology. arXiv:
1507.07112.
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[Ber12]
-
George M. Bergman. “On diagram-chasing in double complexes”. In:
Theory Appl. Categ. 26 (2012), No. 3, 60–96. arXiv: 1108.0958.
-
[Gos21]
-
Amartya Goswami. “\(L\)-homologies of double complexes”. In: Comm.
Algebra 49.4 (2021), pp. 1600–1608. arXiv: 2110 . 12473. url:
https://doi.org/10.1080/00927872.2020.1842430.
-
[Hue04]
-
J. Huebschmann. “Minimal free multi-models for chain algebras”. In:
Georgian Math. J. 11.4 (2004), pp. 733–752. arXiv: math/0405172.
-
[KQ20]
-
Mikhail Khovanov and You Qi. “A faithful braid group action on the
stable category of tricomplexes”. In: SIGMA Symmetry Integrability
Geom. Methods Appl. 16 (2020), Paper No. 019, 32. arXiv: 1911.
02503. url: https://doi.org/10.3842/SIGMA.2020.019.
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[MR19]
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Fernando Muro
and Constanze Roitzheim. “Homotopy theory of bicomplexes”. In: J.
Pure Appl. Algebra 223 (2019), pp. 1913–1939. arXiv: 1802.07610.
url: https://doi.org/10.1016/j.jpaa.2018.08.007.
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[Ste21]
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Jonas Stelzig. “On the structure of double complexes”. In: J. Lond.
Math. Soc. (2) 104.2 (2021), pp. 956–988. arXiv: 1812.00865. url:
https://doi.org/10.1112/jlms.12453.
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