高次の圏では, 2つの morphism の関係を考えるとき, 等しいか否かだけでなく, 同型かどうかを考えることもできる。 実際には,
同型を考えないといけない場合がほとんどである。
例えば, bicategory では, morphism の合成についての結合法則は, 同型 \((f\circ g)\circ h\cong f\circ (g\circ h)\) しか仮定されない。
問題は, 4つ以上の morphism の合成を考えるときには, 括弧の付け方が更に増えることで, 全ての場合を考えると無限個のパターンの同型が必要になる。
その上, identity morphism の条件も同型でしか成り立たないので, 扱う同型写像は更に増える。幸い, 結合法則ついては4つの場合の五角形の図式,
identity morphism については 結合性の同型との関係を表す三角形の図式, の2種類の図式が可換になっていれば,
どんな場合も可換になることが知られている。 これは, monoidal category の場合には, Mac Laneの coherence
theorem として知られているものである。
- Mac Lane の coherence theorem
Kassel の [Kas95] の §XI.5 に詳しい証明がある。 また, nLab の解説が分かりやすい。 そこにあるように,
coherence theorem と呼ばれているものには, 他にもいくつかの形がある。最も有名なのは, strict monoidal category
で置き換えられる, というものだろう。
- 任意の monoidal category は strict monoidal category と monoidal category
として同値になる。
当然, bicategory や symmetric monoidal cateogry などへの一般化がある。
- 任意の bicategory は strict \(2\)-category と bicategory として同値になる。
- 任意の symmetric monoidal category は permutative category と同値になる。(Isbell
の [Isb69])
nLab の coherence theorem のページに, 様々な場合の coherence theorem のリストがある。
Malkiewich と Ponto の Mac Lane の定理の証明 [MP] の方法は, 様々な種類の圏の coherence
を示すのに使えるようである。
ここで気をつけないといけないのは, 更に高次になると, 一般には, 完全に strict なものに置き換えることはできない,
ということである。例えば, tricategory は, 一般には strict \(3\)-category にはできない。が, Gray-category
にはできる。
このように, 様々な coherence theorem があると, それらを統一して扱いたくなる。これについては, Power の[Pow89]
や Lack の [Lac02]がある。
References
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[Isb69]
-
John R. Isbell. “On coherent algebras and strict algebras”. In: J.
Algebra 13 (1969), pp. 299–307.
-
[Kas95]
-
Christian Kassel. Quantum groups. Vol. 155. Graduate Texts in
Mathematics. New York: Springer-Verlag, 1995, pp. xii+531. isbn:
0-387-94370-6.
-
[Lac02]
-
Stephen Lack. “Codescent objects and coherence”. In: J. Pure Appl.
Algebra 175.1-3 (2002). Special volume celebrating the 70th birthday
of Professor Max Kelly, pp. 223–241. url:
http://dx.doi.org/10.1016/S0022-4049(02)00136-6.
-
[MP]
-
Cary Malkiewich and Kate Ponto. Coherence for bicategories, lax
functors, and shadows. arXiv: 2109.01249.
-
[Pow89]
-
A. J. Power. “A general coherence result”. In: J. Pure Appl. Algebra
57.2 (1989), pp. 165–173. url:
http://dx.doi.org/10.1016/0022-4049(89)90113-8.
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