トポロジーと計算機の関係には, 大きく分けて2つのものがある。
前者は新しいもので, 21世紀になって盛んになった。 もちろん計算機科学といっても様々であるが, 一つにトポロジーの道具を計算機にかけられる形にして,
現実の問題, 例えば 画像認識に応用する, ということも行なわれるようになった。
画像認識は計算機科学とは言えないかもしれないが, 理論的な計算機科学にもトポロジーが使われるようになっている。 例えば, Gaucher は
モデル圏の概念を, 並列処理の理論に導入した。 Stanford には, 次のようなweb site があるが, G. Carlsson
が重要な役割を果たしているようである。
一方, 代数的トポロジーの研究に計算機で行なうことでは, まず複雑な計算に計算機を使うことが, 古くから行なわれてきた。 特に,
Adamsスペクトル系列の計算には何人もの人が挑戦している。
一般の spectral sequence については, SpectralSequences という Macaulay2 の package [BGG]
がある。
コンピューターの画面で 単体的複体や 曲面を自由にいじれるようになったことは, トポロジーの学習にとって重要な進歩である。
もっとコンピューターによる視覚化をトポロジーの学習に取り入れるべきかもしれない。
トポロジーに限らず, 数学全般との関係では, “proof assistant” という種類のソフトが興味深い。
この Quanta の記事のように, これからは, machine learning も有効な道具になっていくのかもしれない。
He の [He23] は, 数学の構造を学習させる試みについての review である。 Williamson による deep learning
をどのように数学の研究に使っていくか, についての論説 [Wil24] もある。その最後の section にいくつか例があるが,
そこでは組合せ論での反例の発見, 予想を立てる, 計算の方向を決める, などが挙げられている。
より具体的には, 結び目についての Juhász ら の [Dav+24] や, lattice polytope についての Hofscheier らの
[Bao+23] などの試みがある。 Hofscheier らは, [CHK23] で, machine learning を使って Ehrhart series
から lattice polytope の次元を予測すること試みている。
AI 産業は, 数学を身につけた人の就職先としても有望かもしれない。 最近 AI に category theorist が多数関っていることについて,
Baez が この blog post に書いている。
数学全般と言えば, 数学の文書を書くときにも, 各種ソフトウェアのお世話になる。 代表的なのは \(\mathrm {\TeX }\) とその周辺のソフトウェアだろう。 最近は,
Obsidian のように, \(\mathrm {\TeX }\) の書式が使えるものが増えている。
論文に spectral sequence の絵を入れるための道具も開発されている。 \(\mathrm {\LaTeX }\) では, TikZ を使った spectralsequences
という package がある。また Dan Isaksen と Joey Beauvais-Feisthauer が SeqSee という spectral
sequence の visualization のためのツールを開発している。
私は, 文献データを文書に入れるときには Bib\(\mathrm {\LaTeX }\) という \(\mathrm {\LaTeX }\) のパッケージを使っている。なので, 文献データを処理するのは bibtex ではなく
biber である。
- Bib\(\mathrm {\LaTeX }\)
- biber
この website のように数学のことを公開しようとするときには, \(\mathrm {\TeX }\) で書いて XHTML に変換するのが楽である。この website
では \(\mathrm {\TeX }\)4ht を使っているが, より古くは LaTeX2HTML というものがある。他にも Python を使った plas\(\mathrm {\TeX }\) があり,
Stacks project や Lurie の Kerodon で使われているので, 最近は plas\(\mathrm {\TeX }\) が一番有名かもしれない。 そして,
数式を表示するためには MathJax を使う。可換図式も XyJax を使えば描ける。
References
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[Bao+23]
-
Jiakang Bao et al. “Polytopes and machine learning”. In: Int. J.
Data Sci. Math. Sci. 1.2 (2023), pp. 181–211. arXiv: 2109.09602.
url: https://doi.org/10.1142/S281093922350003X.
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[BGG]
-
Adam Boocher, Nathan Grieve, and Eloísa Grifo. The software
package SpectralSequences. arXiv: 1610.05338.
-
[CHK23]
-
Tom Coates, Johannes Hofscheier, and Alexander M. Kasprzyk.
“Machine learning: the dimension of a polytope”. In: Machine
learning in pure mathematics and theoretical physics. World Sci.
Publ.,
Hackensack, NJ, [2023] ©2023, pp. 85–104. arXiv: 2207.07717. url:
https://doi.org/10.1142/9781800613706_0003.
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[Dav+24]
-
Alex Davies, András Juhász, Marc Lackenby, and Nenad Tomašev.
“The signature and cusp geometry of hyperbolic knots”. In:
Geom. Topol. 28.5 (2024), pp. 2313–2343. arXiv: 2111.15323. url:
https://doi.org/10.2140/gt.2024.28.2313.
-
[He23]
-
Yang-Hui He. “Machine-learning mathematical structures”. In: Int.
J. Data Sci. Math. Sci. 1.1 (2023), pp. 23–47. arXiv: 2101.06317.
url: https://doi.org/10.1142/S2810939222500010.
-
[Wil24]
-
Geordie Williamson. “Is deep learning a useful tool for the pure
mathematician?”
In: Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 61.2 (2024), pp. 271–286. arXiv:
2304.12602. url: https://doi.org/10.1090/bull/1829.
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