トポロジーと情報科学

トポロジーと計算機の関係には, 大きく分けて2つのものがある。

前者は新しいもので, 21世紀になって盛んになった。 もちろん計算機科学といっても様々であるが, 一つにトポロジーの道具を計算機にかけられる形にして, 現実の問題, 例えば 画像認識に応用する, ということも行なわれるようになった。

画像認識は計算機科学とは言えないかもしれないが, 理論的な計算機科学にもトポロジーが使われるようになっている。 例えば, Gaucher は モデル圏の概念を, 並列処理の理論に導入した。 Stanford には, 次のようなweb site があるが, G. Carlsson が重要な役割を果たしているようである。

一方, 代数的トポロジーの研究に計算機で行なうことでは, まず複雑な計算に計算機を使うことが, 古くから行なわれてきた。 特に, Adamsスペクトル系列の計算には何人もの人が挑戦している。

コンピューターの画面で単体的複体曲面を自由にいじれるようになったことは, トポロジーの学習にとって重要な進歩である。 もっとコンピューターによる視覚化をトポロジーの学習に取り入れるべきかもしれない。

トポロジーに限らず, 数学全般との関係では, “proof assistant” という種類のソフトが興味深い。

数学全般と言えば, 数学の文書を書くときにも, 各種ソフトウェアのお世話になる。 代表的なのは \(\mathrm {\TeX }\) とその周辺のソフトウェアだろう。 最近は, Obsidian のように, \(mathrm{\TeX }\) の書式が使えるものが増えている。

  • \(\mathrm {\TeX }\)

私は, 文献データを文書に入れるときには Bib\(\mathrm {\LaTeX }\) という \(\mathrm {\LaTeX }\) のパッケージを使っている。なので, 文献データを処理するのは bibtex ではなく biber である。

  • Bib\(\mathrm {\LaTeX }\)
  • biber

この website のように数学のことを公開しようとするときには, \(\mathrm {\TeX }\) で書いて XHTML に変換するのが楽である。この website では \(\mathrm {\TeX }\)4ht を使っているが, より古くは LaTeX2HTML というものがある。他にも Python を使った plas\(\mathrm {\TeX }\) があり, Stacks project や Lurie の Kerodon で使われているので, 最近は plas\(\mathrm {\TeX }\) が一番有名かもしれない。 そして, 数式を表示するためには MathJax を使う。可換図式も XyJax を使えば描ける。

この Quanta の記事のように, これからは, machine learning も有効な道具になっていくのかもしれない。Williamson による deep learning をどのように数学の研究に使っていくか, についての論説 [Wil] もある。

  • machine learning

結び目については, Juhász ら の [Dav+] が, Lattice polytope については, Bao らの [Bao+] などの試みがある。

References

[Bao+]

Jiakang Bao et al. Polytopes and Machine Learning. arXiv: 2109. 09602.

[Dav+]

Alex Davies, András Juhász, Marc Lackenby, and Nenad Tomasev. The signature and cusp geometry of hyperbolic knots. arXiv: 2111.15323.

[Wil]

Geordie Williamson. Is deep learning a useful tool for the pure mathematician? arXiv: 2304.12602.