多変数の微積分は, 学部1年次に学ぶことであるが, その延長として可微分多様体がある。 多変数の微積分の定理の中で,
可微分多様体を学ぶために必要なのは, まず陰関数定理と逆関数定理だろうか。
通常の微積分の教科書での逆関数定理の仮定は \(C^1\)級であるが, 偏導関数の連続性は不要なのではないか, という質問を Tao が
MathOverflow でしている。 そして, この話題について blog の記事にまとめている。文献としては, Cernovskii の [Čer64;
Čer65] や Raymond の [Ray02] があるようである。Biasi と Gutierrez と dos Santos [BGS08] は,
彼等の “homological implicit function theorem” の応用として考えている。
多変数関数が1変数関数と大きく異なるのは, 極限を取る方向 (道) がたくさんあるからである。 それにより方向微分 (directional
derivative) が考えられる。Huang と Marcantognini と Young [HMY06]は, 高次の方向微分を用いると,
chain rule の高階導関数版 (いわゆる Faà di Bruno の公式) がきれいに書けることを示している。このようなことが,
最近まで知られていなかったのは驚きである。
- directional derivative を用いた higher chain rule
ホモロジー (chain complex) の概念は, Stokes の定理を知っていると理解し易い, かもしれない。Stokes の定理だけでなく,
多変数の微積 (ベクトル解析) は代数的トポロジーにとっても重要な基礎である。 そのことを意識した教科書として [Ful95] や [MT97]
がある。
低次元では, Gauss の発散定理とか Green の公式と呼ばれる version がある。 これらは, ベクトル解析の話題だろうが。
References
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[BGS08]
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Carlos Biasi, Carlos Gutierrez, and Edivaldo L. dos Santos. “The
implicit function theorem for continuous functions”. In: Topol.
Methods Nonlinear Anal. 32.1 (2008), pp. 177–185. arXiv: 0706.3905.
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[Čer64]
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A. V. Černavskiı̆. “Finite-to-one open mappings of manifolds”. In:
Mat. Sb. (N.S.) 65 (107) (1964), pp. 357–369.
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[Čer65]
-
A. V. Černavskiı̆. “Addendum to the paper “Finite-to-one open
mappings of manifolds””. In: Mat. Sb. (N.S.) 66 (108) (1965),
pp. 471–472.
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[Ful95]
-
William Fulton. Algebraic topology. Vol. 153. Graduate Texts in
Mathematics. New York: Springer-Verlag, 1995, p. xviii 430. isbn:
0-387-94326-9; 0-387-94327-7.
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[HMY06]
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H.-N. Huang, S. A. M. Marcantognini, and N. J. Young. “Chain rules
for higher derivatives”. In: Math. Intelligencer 28.2 (2006), pp. 61–69.
url: https://doi.org/10.1007/BF02987158.
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[MT97]
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Ib Madsen and Jørgen Tornehave. From calculus to cohomology.
de Rham cohomology and characteristic classes. Cambridge:
Cambridge University Press, 1997, pp. viii+286. isbn: 0-521-58059-5;
0-521-58956-8.
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[Ray02]
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Jean Saint Raymond. “Local inversion for differentiable functions
and the Darboux property”. In: Mathematika 49.1-2 (2002), 141–158
(2004). url: http://dx.doi.org/10.1112/S0025579300016132.
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