二つの関手の間の関係の中では, adjoint であるというのが基本的である。 Adjoint 性については様々な扱いがある。例えば
Ellerman は [Ell] で heteromorphism という概念を用いて adjoint 性を特徴づけることを考えている。Street
[Str12] は, 関手と “object の間の対応” が adjoint の関係にあるときに, 少し条件をつければ “object の間の対応”
が関手に拡張できることを言っている。
ある関手 \(f:C\to D\) が left adjoint を持つなら, \(f\) は limit を保つ。 また right adjoint を持つなら colimit を保つ。これは,
adjoint を持つ関手の基本的な性質であるが, その逆が成り立つための条件を考えたのが, Freyd の adjoint functor theorem
である。
- general adjoint functor theorem
- special adjoint functor theorem
nLab のページによると, これらに Freyd の名前が付いている理由は, Freyd の [Fre03] の Chapter 3 の
Exercise に登場するからのようである。
関手は圏の間の関係を記述するものであるが, 複雑な構造を持った対象の成す圏からより単純な構造を持つ対象の圏へは, “余分な構造を忘れる”
関手が自然に定義される。これを forgetful functor (忘却関手) という。また, forgetful functor が left adjoint
を持つときには, それはその object で生成された free object を対応させる functor と考えられる。 Mac Lane の本
[Mac98] の IV§2 には, 様々な adjoint functor の例がある。
- 忘却関手 (forgetful functor) とその adjoint としての free functor
Left adjoint としては, Abel 群の圏の群の圏への包含の left adjoint である Abelianization functor
のような, 部分圏の包含の left adjoint もある。 層の圏の前層の圏への包含も, sheafification という left adjoint を持つ。
このような部分圏を reflective subcategory という。もちろん right adjoint を持つ場合もあり, coreflective
subcategory と呼ばれる。両方持つ場合は, Cortés-Izurdiaga, Crivei, Saorín の [CCS23] では,
bireflective subcategory と呼ばれている。
- reflective subcategory
- coreflective subcategory
- bireflective subcategory
Adjoint functor の対があると, monad (triple) や comonad (cotriple)
と呼ばれるものが自然に得られる。Eilenberg と Moore [EM65] によると, このことに最初に気付いたのは Huber [Hub61]
らしい。
関手 \(U : \bm {A}\to \bm {B}\) が left adjoint \(F\) を持つ場合, その adjunction から monad \(T_{U,F}\) ができるが, \(U\) により関手 \(U_1 : \bm {A}\to \bm {B}^{T_{U,F}}\) が誘導される。ここで \(\bm {B}^{T_{U,F}}\) は
\(T_{U,F}\) の Eilenberg-Moore category である。この \(U_1\) を comparison functor と呼ぶ。
MacDonald と Stone の [MS82] や Adamek と Herrlich と Tholen の [AHT89] では, 更に
comparison functor が left adjoint を持つばあい, その comparison functor が left adjoint を持つ場合,
\(\ldots \), という列が考えられ, それが有限回で収束するのはどういう場合か, という問題が考えられている。
References
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[AHT89]
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Jiří Adámek, Horst Herrlich, and Walter Tholen. “Monadic
decompositions”. In: J. Pure Appl. Algebra 59.2 (1989), pp. 111–123.
url: http://dx.doi.org/10.1016/0022-4049(89)90129-1.
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[CCS23]
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Manuel Cortés-Izurdiaga, Septimiu Crivei, and Manuel Saorín.
“Reflective and coreflective subcategories”. In: J. Pure Appl. Algebra
227.5 (2023), Paper No. 107267, 43. arXiv: 2109 . 05111. url:
https://doi.org/10.1016/j.jpaa.2022.107267.
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[Ell]
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David Ellerman. Adjoint Functors and Heteromorphisms. arXiv:
0704.2207.
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triples”. In: Illinois J. Math. 9 (1965), pp. 381–398. url:
http://projecteuclid.org/euclid.ijm/1256068141.
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[Fre03]
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3 (2003), pp. 1–190.
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[Hub61]
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Peter J. Huber. “Homotopy theory in general categories”. In: Math.
Ann. 144 (1961), pp. 361–385. url:
https://doi.org/10.1007/BF01396534.
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[Mac98]
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Saunders Mac Lane. Categories for the working mathematician.
Second. Vol. 5. Graduate Texts in Mathematics. New York:
Springer-Verlag, 1998, pp. xii+314. isbn: 0-387-98403-8.
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[MS82]
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John L. MacDonald and Arthur Stone. “The tower and regular
decomposition”. In: Cahiers Topologie Géom. Différentielle 23.2
(1982), pp. 197–213.
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[Str12]
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Ross Street. “The core of adjoint functors”. In: Theory Appl. Categ.
27 (2012), No. 4, 47–64. arXiv: 1112.0094.
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