成分が非負の実数である正方行列 \(A\) に対しては, いわゆる Frobenius-Perron theorem が成り立つ。Perron-Frobenius
theorem と呼ばれることも多いようである。 その固有値の中に非負のものがあり, その中で最大のもの \(\lambda (A)\) は, 他の固有値の絶対値以上になる。また \(A\)
の成分が全て正のときは, \(\lambda (A)\) も正で重複度\(1\)を持ち, その固有ベクトルは, 全て正の成分を持つ。といった内容の定理である。
- Frobenius-Perron theorem for matrix of nonnegative entries
Etingof, Nikshych, Ostrik の [ENO05] では, Gantmacher の [Gan98] が参照されている。
日本語では, 例えば, 齋藤の線形代数の教科書 [齋藤正66] にも, 演習問題として載っている。
Etingof らの本に登場するのは, 彼等が fusion category の object に対し, Frobenius-Perron
dimension を定義しているからである。
それは, fusion category の Grothendieck group が unital based ring の構造を持つことによる。Based
ring とは, Abel群として free である環で, 構造定数が非負になる基底を持ち, 更にいくつかの条件をみたすものである。
有限 rank の based ring \(A\) に対しては, その条件をみたす \(\Z \) 基底の元 \(b\) をかける写像 \(A\to A\) から非負成分を持つ正方行列ができ,
その最大の固有値 \(\lambda (b)\) を \(b\) の Frobenius-Perron dimension という。 更にその対応は ring homomorphism \[ \mathrm {FPdim} : A \rarrow {}\R \]
に拡張できる。よって fusion category \(\bm {C}\) に対しても, ring homomorphism \[ \mathrm {FPdim} : K(\bm {C}) \rarrow {} \R \] が定義される。
- Frobenius-Perron dimension
他の一般化としては, Chen らによる Abelian category の Frobenius-Perron dimension
[Che+19] や bound quiver algebra の表現の圏の Frobenius-Perron theory [CC]
などがある。
References
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[CC]
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J. M. Chen and J. Y. Chen. Frobenius-Perron theory of the bound
quiver algebras containing loops. arXiv: 2204.05458.
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[Che+19]
-
Jianmin Chen et al. “Frobenius-Perron theory of endofunctors”. In:
Algebra Number Theory 13.9 (2019), pp. 2005–2055. arXiv: 1711.
06670. url: https://doi.org/10.2140/ant.2019.13.2005.
-
[ENO05]
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Pavel Etingof,
Dmitri Nikshych, and Viktor Ostrik. “On fusion categories”. In: Ann.
of Math. (2) 162.2 (2005), pp. 581–642. arXiv: math/0203060. url:
http://dx.doi.org/10.4007/annals.2005.162.581.
-
[Gan98]
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F. R. Gantmacher. The theory of matrices. Vol. 1. Translated from
the Russian by K. A. Hirsch, Reprint of the 1959 translation.
AMS Chelsea Publishing, Providence, RI, 1998, pp. x+374. isbn:
0-8218-1376-5.
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[齋藤正66]
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齋藤正彦. 線形代数入門. 東京大学出版会, Mar. 1966. isbn: 978-4-13-062001-7.
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